採点困難なハイレベル。体操は3Dレーザーによる自動採点へ。

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2020年の東京オリンピックを前に、体操の世界に新しい風が吹こうとしている。これまでは審判の目視によって行われてきた採点を3Dレーザーセンサーとデータ処理技術によって自動化しようという試みが本格的に始動しているのだ。

この3Dレーザーセンサーはレーザーパルスを照射して戻ってくるまでの時間を計測して距離を測るセンサーで、1秒間に230万点のレーザー光を発して競技中の体操選手の動きを捉え、選手の骨格の動きを割りだし、どのような技を繰り出したのか、また、その完成度を判定する。
骨格の認識技術に関しては、処理時間はかかるが高精度なフィッティング方式は胴体のみに使用し、独自のパラメーター削減方式で効率化を図り、処理時間が短く計測可能だが精度の低いモデル方式で体の部位を認識し手と肢の動きを捉えるようにし、情報処理スピードの高速化を目指した。
また、既存のレーザーセンサーでは解像度が低くなるという欠点があった、計測距離が長くなりがちな「床」(一辺12m)の種目に関しても、新システムでは検出距離が長い場合には投射点を自動的にしぼる、所謂望遠機能を搭載出来るようになったということだ。

sp_161027fujitsu_02 図1
*体操選手の動きを3Dレーザーセンサーでスキャンし、骨格を認識している様子。

これまで選手の動作分析にはモーションキャプチャー技術(赤外線を反射する球体をつけて赤外線カメラで動きを捉える)が使われてきたが、精度には優れているものの反射光を捉えて計測する技術である為、カメラからの死角に入ってしまうと正確に動きを捉えることが出来なくなってしまうという欠点があった。死角を作らない為には複数台のカメラを備えなくてはならず、コストの面でも少なからず負担となっていた。また、選手にとっても、測定中にマーカーが落下する、体に当たって痛む、気になってパフォーマンス精度が落ちてしまう等の無視できない問題点があった。
これに対して、今回開発されている3Dレーザーセンサーはマーカーをつける必要がなく、カメラの死角部分のデータが取得出来ないのは同様だが、モーションキャプチャーの場合の台数よりも少ないカメラで計測出来る為、コストの問題もクリア出来るという。

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採点競技には当然のことながら公平で正確なジャッジが求められているが、体操の技術向上は目を見張るものがあり、最近の高難度の技は最早目視で追いきることが困難な程にまでなっている。例を挙げるなら、白井健三選手は、「身体を伸ばして後方に2回宙返りしてその間に3回ひねりを入れる」(ページトップ写真)、という動きを、1秒前後の間にやっているのだ。審判が体操経験者であるとか、ベテランである、という以前に、人の目で正確なジャッジが出来る限界にまで選手のレベルは上がっているのである。実際問題として見落としや誤りが多く見られ、採点にも時間がかかっている、というのが現実だ。そこへ3Dレーザーセンサーを導入することで、正確さと採点までの高速化を図る狙いだ。また、体操競技をテレビ等で観戦する側の立場に立つと、選手の競技後に3Dデータ化された画像で、その技の正確さを直に見ることが出来るようになるという新たな楽しみが生まれ、活性化に繋がっていくという可能性もある。

先ずは、「あん馬」を対象にして日本体操協会がデータを提供し、要素技術の改良と実証システムの開発が始まっている。順次、「鉄棒」などにも範囲を広げていくとのことだ。体操で実績を積み、その後はフィギュアスケート等の他の採点競技にも適用できるよう研究を進めている。
2017年に実証実験、2019年に実用化を目指しており、可能であれば「2020年の東京オリンピックで使ってもらいたい」というのが開発者の希望だそうだ。
その時が採点競技の新しい時代の幕開けとなるかもしれない。

参考
*産経新聞ニュース
*日経テクノロジーonline
*SPORT INNOVATORS Online
*MONOist 人工知能ニュース
*http://image.itmedia.co.jp/mn/articles/1610/27/sp_161027fujitsu_02.jpg(図1)
*http://www.nikkei.com/content/pic/20160707/96958A9F889DE2E6E3E2E4E6E0E2E0E5E2E4E0E2E3E4E2E2E2E2E2E2-DSXZZO0410657027062016000000-PN1-9.png(図2)

「執筆者:株式会社光響 緒方」