レーザーV.S.小惑星!!

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世界各地で定期的に話題になる「世界滅亡説」。懐かしいところではノストラダムスの大予言、比較的最近ではマヤの予言もその類だ。映画や小説の題材としてもポピュラーで、滅亡の仕方も多岐に亘り、疫病のパンデミック、人工知能の暴走、火山の噴火に大洪水に宇宙人の侵略と、トータルすると地球は何度滅亡の危機に陥ったのか、と思うほどの定番ぶりだ。

その中でも上位に食い込んでくるであろう題材の中に、「小惑星の衝突」がある。近年の撮影技術の目覚ましい向上もあって、すぐに映画のタイトルを思い浮かべることの出来る人もいると思う。滅亡に抗おうとする人々や危機に瀕する人類の心のうちに、手に汗握った人もいるかと思う。しかし、映画であればハッピーエンドで「あ~、良かった」で終了できるが、現実に小惑星が地球に衝突!となったらどうなるのだろうか?これは起こりえない話ではなく、寧ろ大いにあり得る事態なのだ。

小惑星の地球への衝突の危険性は専門家からも警告が発せられているのだが、
その対策としてコレが究極だろう!と思われるものが現実味を帯びてきている。それがDE-STARだ。一瞬、某映画のデス・スターに見間違えてしまいそうな名前だが、「Directed Energy System for Targeting of Asteroids and exploRotation」の略だ。
このシステムは、映画やゲームのように小惑星をミサイルや爆弾でド派手に吹き飛ばすものではない。レーザーを照射して小惑星を蒸発させるほどにまで熱し、蒸発した岩石が噴出することで発生する反動力がその軌道を逸らすのだ。例えば100mのレーザー照射装置を持つDE-STARであれば、320万km先にある直径100mの小惑星の軌道を逸らすことが可能になるとのことだ。
そう、何も小惑星を粉々に吹き飛ばす必要は無いのだ。地球にぶつかりさえしなければ良いのだから。それにこの方法なら砕けた破片が降り注ぐという事態も避けられる。

23bcbf5a 図1

宇宙船の推進、組成分析、小惑星の軌道変更を行うDE-STAR(右写真)・小惑星へのレーザー照射(左写真)イメージ

現在開発中の出力20kWのDE-STARLITEなら、15年間の稼働で12.800万km先にある直径300mの小惑星の軌道を逸らすことが出来る。
小惑星の組成に似た玄武岩を用いて実用化に向けた実験が既に行われており、レーザーを照射し白熱するまで熱することに成功している。これをレーザーアブレーションと言い、固体表面が局所的に高温となることで表面層が蒸発し、原子、分子、プラズマなどが飛散することで起きる。これによって蒸発した表面が噴出して推進力とすることが出来る。言ってみれば小惑星自体がロケットエンジンを搭載したような状態になるのだ。場所は宇宙空間なわけだから、方向転換して軌道を変えるには十分な力である。
しかし、小惑星はただ宇宙空間を移動しているだけではなく、高速で回転しているのだ。その状態にレーザーを照射して効果が得られるのだろうか、と考えてしまうが、そこも当然ぬかりはなく既に実験は行われており、磁力で回転を与えられた玄武岩を用いたシミュレーションで、小惑星の回転速度を落とし進行方向を変えることが出来るのかを確かめている。下の動画でその様子を見ることが出来る。


DE-STAR – Deflecting Asteroids with Laser Beams
*磁石で回転させた玄武岩が逆回転する様子。

小惑星の回転速度を落とすことが出来るようになれば、方向転換以外にも利点がある。調査や採取を容易にしてくれるのだ。どの小惑星もその速度に違いはあるが大なり小なり回転している。サンプル採取をするにはその回転を遅くすることが必要だが、実験ではDE-STARが小惑星の回転速度を弱める、或いは止めることに非常に有効な手段だと証明されているとのことだ。

小惑星が地球に衝突した事件で有名なものと言えば、1908年6月30日、ロシア帝国(当時)領内シベリア・ツングースカ川で起きた大爆発が有名だ。半径30~50kmで森林火災が起き、2150平方kmに渡って樹木がなぎ倒され、発生した衝撃波で1000km離れた家の窓ガラスが割れたという。きのこ雲は数百km離れた場所でも確認され、イルクーツクでは地震も観測されている。周囲に村落がなく人的被害が出なかったことは幸いとしか言いようがない。爆発の跡地は、爆発の衝撃波と隕石の高速移動による衝撃波が合成され、羽根を広げた蝶のような形になっており、『ツングースカバタフライ』と呼ばれている。(当初は現場から隕石の痕跡が発見されなかったこともあり、彗星(主成分が氷)の衝突と思われていたが、爆発から105年後、ドイツ・アメリカ・ウクライナの科学者チームの研究により、隕石であったことが確認されている。)
また、原因が隕石であると確定しているもので最大の人的被害を出した事件は、2013年2月15日、ロシア・チェリャビンスク州の隕石落下である。その直径は数m~15m、質量は約10t。最も被害の大きかったチェリャビンクスでは4474棟の建物のガラスやドアが吹き飛び、怪我人は1491人(重傷者52人)、52歳の女性が隕石の破片の直撃を受け頸椎骨折の重傷を負っている。(隕石が人に直撃する事は非常に稀なケースだ。)また、隕石が落下して行く様子を、車のドライブレコーダー等で捉えた映像が数多く残されている。

このように実際に小惑星の地球への衝突は起こっている。チェリャビンスクの例を見れば、10m前後の隕石でこの被害となれば、数百m規模の小惑星が衝突した場合はどうなるのか想像するだけで恐ろしくなる。恐竜の絶滅原因も小惑星の衝突だったとする説もあり、呑気にSF映画のようだ、と笑ってはいられない。DE-STARシステムが軌道に乗り、地球を守ってくれることを願うばかりである。

それにしても、歴史的な小惑星の衝突を2回も体験する羽目になったロシア。国土が広いというのも、なかなかに大変なのかもしれない。

参考

*カラパイア(http://karapaia.com/archives/52214161.html)
*wikipedia
*http://livedoor.blogimg.jp/karapaia_zaeega/imgs/2/3/23bcbf5a.jpg(図1)

「執筆者:株式会社光響 緒方」