レーザー爆縮でダイヤモンドより硬くより輝く

モース硬度10の唯一の鉱物。世界で最も硬い物質であるダイヤモンド。理論上やシミュレーション結果ではその硬度を凌ぐ鉱物があるとされているが、実際に実験し証明された物の中では今もって最高の地位を誇っている。
そのダイヤモンドを凌ぐ硬度を持つ物質が、アメリカ・ノースカロライナ州立大学の研究メンバーによって作り出された。その名称は「Qカーボン」。
「これまで地球上に存在したことは無い物質だ。もし自然界に存在するとすれば、他の惑星の中心核部分だろう」と研究者が語るその物質は、ダイヤモンドより高い硬度を持つだけでなく、蛍光性、電磁性を持つのだという。

 図1

天然のダイヤモンドは地中140~200kmの地層の炭素原子が1000~1,500℃の高温と圧力を瞬間的に加えられ、直後に急速に冷やされることで形成される。温度がこれ以上高すぎても低すぎてもダイヤモンドには成らず、グラファイト(黒鉛。鉛筆の材料等に使われる)として形成され、直後の冷却もまた同じだ。ほんの僅かの差が、同じ固形炭素物質の存在を分けている。
Qカーボンの生成も、ダイヤモンドと同じような手順を、但し人工的に環境を作り出して行っている。
レーザー核融合のような高エネルギーを持つレーザーを照射し、炭素原子を爆縮させるのだ。これにより、天然ダイヤモンド形成時の高温や高圧力を再現する。レーザー照射時間は200ナノセカンド(1ナノセカンドは1秒の10億分の1秒)、照射時の温度は3700℃にまで上昇する。(地球の中心核が5700℃、外外核が4400℃、下部マントルでようやく3700℃である。3700℃のままマグマが噴出することはありえない為、自然にQカーボンが形成されることは不可能だ。それ故の、前述の研究者の言葉であり、人工物である証だ)。

 図2
*サファイヤ上にQカーボンの結晶が成長している様子の電子顕微鏡写真

 図3
*Qカーボン拡大写真

似たような生成過程をたどるダイヤモンドとQカーボンだが、その性質にはいくつかの違いがある。Qカーボンは高い硬度と共に、より暗い場所でも輝きを放つ蛍光性を持つ。更にはダイヤモンドには無い通電性を持っている。これは同じ炭素性物質のグラファイトと共通した性質だ。

ダイヤモンドより硬く、より美しく輝くQカーボンだが、宝石・装飾品としての登場はまだ先になりそうだ。現在の技術で生成できるQカーボンは20ナノメートルから500ナノメートルだ。人間の髪の毛の半分以下の厚みしかない。宝石として認められるサイズの結晶を作り出すには、まだまだ研究と実験を繰り返す必要がありそうだ。

しかし、開発者のジェイ・ナラヤン氏によると、生成可能なこの500ナノメートルに届くか届かないかの薄い膜状の物質は、ダイヤモンドのナノニードルやマイクロニードル、ナノドットや大きな膜状ダイヤモンドを作ることができるとのこと。これは薬物投与に使用でき、医療業界に大きく貢献するだろうと目されている。他にも高温用スイッチの製造、電力工学での利用も見込まれている。また常温常圧で生成可能であると共に、目の手術などに使用されるレーザーを使用出来る為、応用品の開発が容易で、製造工程にかかる費用は比較的安価であるということで、これからの様々な産業での活用が期待されている。

参考
* 最新のサイエンス・テクノロジーをつぶやく!
http://it-science-news.blog.so-net.ne.jp/2015-12-06
* HUFFPOST
http://www.huffingtonpost.jp/2015/12/05/q-carbon-diamond_n_8730226.html
* CNN.co.jp
https://www.cnn.co.jp/fringe/35074383.html

*http://www.world-luxury-diamonds.com/cms2/wp-content/uploads/2015/12/pic_special12.jpg(図1)

*http://it-science-news.blog.so-net.ne.jp/_images/blog/_98c/it-science-news/m_120415_mr_Q-carbon_free.jpg(図2)

*http://i2.cdn.turner.com/cnnnext/dam/assets/151201232624-microdiamonds-made-with-new-technique-related-to-q-carbon-large-169.jpg(図3)

「執筆者:株式会社光響 緒方」