ポイント
- 太陽電池の高性能化には、シリコンインゴット中の結晶欠陥が問題であった。
- 実験科学者とデータ科学者の連携により、シリコンインゴット中の結晶欠陥の3次元分布の可視化に成功した。
- 欠陥発生機構の解明によるシリコンインゴットの高品質化、太陽電池の高性能化への貢献が期待される。
名古屋大学大学院工学研究科 宇佐美 徳隆教授の研究グループと、同大学 大学院情報学研究科 工藤博章准教授の研究グループは、多数の太陽電池用シリコンウエハーの蛍光画像を収集し、得られた多数の画像に情報処理技術を適用することで、従来は困難であった太陽電池用シリコンインゴット中の結晶欠陥の3次元分布の可視化に成功しました。再生可能エネルギーへの期待から太陽光発電の普及が急速に進んでいますが、さらなる普及には発電コストの低減が必要です。太陽電池の主材料である多結晶シリコンは、製造コストの低さがメリットですが、結晶欠陥が多いことがエネルギー変換効率を向上するうえでの課題でした。結晶欠陥は、太陽電池用シリコンウエハーを作製するためのシリコンインゴットの製造時に発生することが知られていますが、その内部で結晶欠陥がどのように分布しているかを調べる方法は、これまでにありませんでした。そのため、結晶欠陥の発生メカニズムが解明できず、結晶欠陥の少ない高品質なシリコンインゴット製造技術の開発指針も不明確でした。
本研究グループは、シリコンインゴットをスライスして作製した大量の実用サイズの多結晶シリコンウエハーに、レーザー光を照射し、蛍光と反射光が混ざった画像をCCDカメラで撮影しました。得られた多数の画像に対し、情報処理技術を適用することでウエハー表面のスライス痕やノイズを除去し、シリコン多結晶の結晶欠陥を蛍光強度の低い領域として抽出しました。さらに大量の2次元画像を3次元に再構成することにより、シリコンインゴット中で結晶欠陥が発生したり消滅したりする様子が3次元的に示されました。このようなシリコンインゴット中の結晶欠陥の3次元可視化により、結晶欠陥の発生メカニズムが解明され、結晶欠陥の少ない高品質なシリコンインゴットの開発が加速すると期待されます。
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