便利な道具は、あっという間に広まるものだ。ドローンをあちこちで飛ばすなんて、そんな危ないことをしていいのだろうかと思っているうちに、いまではテレビでもドローンの空撮映像を当たり前に見るようになった。
科学者たちは、限られた予算をやりくりして研究を進めているので、自分の目的を安く簡単に達成できるなら、その方法を使わない手はない。たとえば地形の計測。小型飛行機からレーザーで測る方法が一般的だが、もしこれにドローンを使うことができれば、費用を大幅に節約できる。こうして開発した技術を社会に出せば、利用者も安く使えるわけだ。
九州大学応用力学研究所の内田孝紀(うちだ たかのり)准教授らの研究グループは、ドローンの空撮写真を使って、風車に被害をもたらす風の乱れをコンピューター・シミュレーションで再現することに成功した。この計算では詳細な地形の高低データが必要だが、小型飛行機を使う場合にくらべて10分の1以下の費用ですんだという。
シミュレーションによる検討の対象にしたのは、愛知県田原市にある民間企業の風車。東南東から風が吹くとき、故障が多かった。風に何かが起きているらしいのだが、風は目に見えない。その具体像を探るには、コンピューターでシミュレーションして、風の流れを再現することが有効だ。
実況を模擬した計算を行うには、地形や土地の状態が分かるデータが必要だ。そこにドローンを利用した。このドローンには、ふつうの可視光で撮影できるカメラが積まれている。狙った地点の写真を、高度75メートルを自動プログラムで縦横に飛びながら、このカメラで連続撮影した。そうして得られた約570枚の写真と、国土地理院が公表している標高データを組み合わせて、風車周辺の詳細な地形を再現した。内田さんによると、小さな風車に悪影響を与える風まで再現するには、地形のデータは数十センチメートルの解像度が望ましい。今回の対象は大型風車だったが、解像度が5メートルの国土地理院のデータにドローンの写真を組み合わせ、解像度を1メートルに高めて利用した。
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