頭蓋骨に窓!脳へのレーザー治療に新たな光

病巣の切除や治療にレーザーが非常に有効である事は最早一般常識になりつつある。癌から花粉症まであらゆる分野で応用され世界中で用いられている。window-to-the-brain-20160719154136-690x528

それは頭部、頭蓋骨の中の病巣に対しても当然ながら同様だ。しかし、それにはいくつかの問題点が付き纏ってきた。ほとんどのレーザーは頭蓋骨を透過出来ないということ、その為に患者は何度も開頭手術を受ける必要があること等である。その問題点を打破する新たな治療法が、カリフォルニア大学リバーサイド校とメキシコのエンセナーダ高等科学教育研究センターで研究されている。

wttb-team-20160719154139-690x458 図1

カリフォルニア大学リバーサイド校(UCR)のWebページで発表されたその方法は、開いた頭蓋骨に透明な『窓』をとりつける、というものである。その窓を通じて脳にレーザー治療を施すことが出来る。この方法は、脳腫瘍や外傷性の障害、脳卒中、神経変性の病気にも有効だという。
この研究は、UCRのアギラール教授らの研究チームによる透明なイットリア安定化ジルコニア(YSZ)の開発成功に端を発する。YSZは歯の治療等に使用されるシリコンと同じもので、以前から使用されているガラスベースの物よりも衝撃耐性が高い。そして、何よりも特筆すべきは生物適合性と細菌感染耐性の高さだろう。脳は人体の中でも極めて繊細な器官だ。開頭手術後に患者本人の切り取られた頭蓋骨をはめ込む際に、わずかな細菌の付着で感染を引き起こすということが現実に起こっていることを考えると、これは大変に重要な事だ。
この窓越しのレーザー治療実験によって、周囲の組織にダメージを与えることなく大腸菌の感染の治療に成功している。これは脳へのインプラントの際の細菌感染に対しても有効だという証明と言えるだろう。研究が完成されれば、この『窓』から文字通り脳への治療に新たな光が差し込むことになると期待されている。

蛇足であるが、・・・この窓をはめ込んだ状態で鏡を見たら自分の脳味噌が見える、ということ。見てみたいような、見たくないような。怖いもの見たさのような。微妙な気分ではある。

参考
*FUTURUS
*Laser Focus World Japan
*http://nge.jp/wp-content/uploads/2016/07/WTTB-team-20160719154139-690×458.jpg(図1)

「執筆者:株式会社光響 緒方」