横浜国立大学大学院工学研究院の小坂英男教授と石田直輝(修士課程2年)らの研究グループは、ダイヤモンド中の窒素空孔中心(NV中心)に存在する単一電子スピンを位相変調されたレーザ光を用いて、高効率かつ高精度な操作を実証することに、世界で初めて成功しました。電子スピンとレーザ光間のエネルギーを等しくすることで,高忠実度化にネックだった光パルスの矩形波制限を取り払うことに成功しました。本成果によって、任意波形整形された光パルスを用いてさらに高精度な光スピン操作が可能となります。これによる万能量子コンピュータや量子通信の高速化により量子テクノロジーの実用化を一気に加速します。本研究成果は、2018年5月11日(米国時間)発行の科学雑誌「Optics Letters」に掲載されました。なお、本研究は科学研究費補助金 基盤研究 S(課題番号16H06326),基盤研究 A(課題番号24244044) ,新学術領域「ハイブリッド量子科学」(課題番号16H01052)、文部科学省ポスト「京」萌芽的課題1「基礎科学のフロンティア-極限への挑戦」、科学技術振興機構(JST)CREST(課題番号JPMJCR1773)、情報通信研究機構(NICT)高度通信・放送研究開発委託研究の支援のもとに行われました。
<研究背景>
原子や電子、光子などのミクロな物質では量子力学という物理学が支配しています。これらのミクロな粒子、すなわち量子の持つ性質を積極的に利用した情報処理が量子情報処理です。量子情報処理には、たとえば、現在のコンピュータとは全く異なる計算原理に基づく量子コンピュータや、完全に安全な盗聴検出を可能にする量子暗号通信があります。この量子情報処理を実現させる量子系として、ダイヤモンドに内在する電子スピンが近年注目されています。ダイヤモンド中の電子スピンは情報の保持と集積化の観点で優れていることが知られており、ダイヤモンドに集積配列された電子スピンを量子制御するためには、スピン一つ一つを個別に、自在に、正確に制御する技術が求められます。レーザ光の局所電場を利用することで電子スピンの個別アクセスが可能ですが、これまでに提案、実証されている制御手法では、制御パラメータが多く、またパルス波形が単純な矩形波に制限されてしまうという問題がありました。
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