発表のポイント:
◆高い時間分解能(10-13秒)を有するパルス電子ビームを用いて、これまでにない超高速の原子変位の直接観測に成功した。
◆光で電子軌道を変調することにより結晶構造を制御する新しいメカニズムを提唱した。
◆光メモリ等のデバイス開発につながる超高速スイッチングや原子結合の光制御への可能性を示唆するものである。
発表概要:
東京大学大学院工学系研究科の出田真一郎日本学術振興会特別研究員(研究当時)、下志万貴博助教(研究当時)、石坂香子教授らの研究グループは、岡山大学異分野基礎科学研究所の石井博文大学院生、工藤一貴准教授、野原実教授らの研究グループ及びドイツのマックスプランク研究所との共同研究のもと、時間分解電子線回折法(Ultrafast Electron Diffraction:UED)を用いて、これまでにない超高速の原子位置の変化(原子変位)を観測することに成功しました。この手法は、レーザーによって作り出したパルス状の電子ビームを用いて物質の回折像を取得することにより、超高速で変動する結晶の原子変位の様子をストロボ撮影するものです。本研究では、特殊な原子結合と結晶構造をもつイリジウムダイテルライド(IrTe2)のダイナミクスを観測しました。実験データを詳細に解析することにより、光励起(れいき)により特定のイリジウム電子軌道が直接変調されることで、イリジウム同士の強い結合に基づく結晶構造が超高速で崩壊及び再構成することを世界で初めて明らかにしました。本研究の成果を礎に、今後は、光メモリ等のデバイス開発につながる超高速スイッチングや原子結合の光制御へ向けた研究が広く展開されることが期待されます。
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