白じゃなかった恐竜の卵。レーザー分析により色付きだったことが判明。

スーパーで売っている鶏の卵。白より赤の方が栄養があるとか、実はそんなことは無くてどっちも変わらない、とか偶に卵の殻の色が話題に上る。鶏卵の赤玉白玉に限らず、同じくスーパーで見かけるウズラの卵はまだら模様だ。鳥の卵の殻が色付き/模様付きだということに全く違和感はないが、実は卵の殻に色や模様が付くのは鳥類だけだ、という事実はあまり知られていない。爬虫類も両生類も魚類も昆虫もクモ綱等卵を産む生物は沢山いるが、洩れなくその卵は白いもので模様も無い。卵を産む数少ない哺乳類であるハリモグラやカモノハシの卵も白だ。何故、鳥類だけが色や模様のある卵を産むのか。それは、他の動物に狙われることが減るようにと鳥類が数世代をかけて獲得した進化だ、というのが通説だ。

しかし、これが誤りであることが判明したようだ。

米・イェール大学のジャスミナ・ウィーマン教授が英科学誌「Nature」に発表した論文によると、白亜紀後期に存在した恐竜の中に、色付きの卵を獲得していた種がいたことが明らかになったというのだ。

現在、鳥類が産む有色卵に使われている色素は赤と青の2種類だ。研究チームはアメリカ大陸や台湾、ヨーロッパ等で発見された恐竜の卵をレーザー機器で分析し、現生鳥類の卵に含まれる色素が存在するかどうかを調べた。結果、ビリベルジンとプロトポルフィリンという2種類の色素の痕跡が発見された。これらは現生鳥類の卵に良く含まれている色素だ。つまり、有色卵は先祖である恐竜から鳥たちが受け継いだもの、ということが判明したのだ。
有色卵を産んでいたとみられるのは、映画『ジュラシックワールド』でお馴染みのヴェロキラプトルやディノニクス他数種。その中の一種であるオビラプトルやディノニクスの卵は、緑色だったのではないかと推測されている。丁度、ヒクイドリやエミューの卵の色のように。


左)図1:ヒクイドリと卵 右)図2:エミューの雛と卵

この結果から、これらの恐竜たちは産卵した後の卵をワニやカメのように土や泥に埋めたのではなく、現生鳥類と同じく開放型の巣を作っていいたことが判明したことになる。埋めてしまうのであれば、エネルギーを使ってまで卵に色を付ける必要は無い。外敵から卵を守るカムフラージュとして色付きの卵を獲得する必要があったのだ。
鳥類の祖先である獣脚類恐竜の巣では卵が露出していたのではないか、という説は以前からあったがそれが裏付けられたことになる。現代で色付きの卵を産むのは開放型の巣を持つ鳥類だけだからだ。事実、鳥類の近縁とされるエウマニラプトル類の卵の気孔が他の多くの恐竜の卵のそれよりも少ないことからもうかがい知ることができる。また、人の目が持つ光を感じる細胞が3種類なのに対し鳥類や恐竜は4種類だ。つまり、白い卵は恐竜の目にはピンク色に輝いて見えたことになる。なんと見つけ易い御馳走だろうか。卵にカムフラージュ用の色を付けることは生存競争に勝つための必須事項だったのだ。鳥類は鳥類になる遥か以前の恐竜の時代、約1.45億年前頃にはその術を身につけていたことになる。

見慣れた鳥類は恐竜とは無関係なような顔をしながら羽毛や叉骨といった特徴的な部分を引き継いできた。ここに新たに色付き卵が加えられたわけだ。研究者たちは、まだら模様や縞模様といった現代の鳥にも多い有色卵を産む恐竜がいなかったか調べていく予定だという。

最後に、鳥類がする抱卵も恐竜時代にすでに始まっている。前出した緑色の卵を産んでいたとみられるオビラプトルもそうだ。


左)図3:オビラプトル復元予想図
右)図4:抱卵状態で化石化したオビラプトル

しかし、このオビラプトルの名前、意味は『卵泥棒』。卵の近くで化石が発見された為、卵を盗みに来ていたに違いないと誤解され、こんな不名誉な名称を頂くことになってしまった。研究によってその誤解は解け、親子であることが証明されると共に恐竜が抱卵していたという事実を世に知らしめる結果となったが、とんだ不運に見舞われた恐竜なのではないだろうか。

参考

*NATIONAL GEOGRAPHIC
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/092000356/?P=2
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/092000356/?P=2
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/110700482/?P=2
https://cdn-natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/092000356/ph_thumb.jpg?__scale=w:500,h:457&_sh=0310de0c90 (Top画像)

*REUTERS
https://jp.reuters.com/article/science-eggs-idJPKCN1N70E6

https://ikimono-matome.com/wp-content/uploads/2018/06/7-18.jpg (図1)
http://livedoor.blogimg.jp/karapaia_zaeega/imgs/c/3/c35f85b4.jpg (図2)
https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/9a/d80d35df4c41759648f1f66769ccbffb.jpg (図3)
http://underzero.net/graph/tz340/tz_344_023.jpg (図4)