気象操作研究。レーザーで雨が降る。

2017年7月8日、米・カリフォルニア州の旱魃が5年の歳月を経て、漸く終息宣言が出された。2014年に出された非常事態宣言も解除されたが、歩道等への水撒きの制限や、節水は継続される見通しだ。

近年、異常気象はカリフォルニアの例だけに留まらず、各地で報告されている。パプアニューギニアやエチオピアでは深刻な干ばつにより、大量の死者が出る可能性が高く、インド、モロッコも危機的な状況にある。また、ソマリアも数年にわたる旱魃で多くの難民が出ている状態だ。

ことは旱魃だけではなく、中国、インド、ロシア、ネパールを始め各地で洪水被害も報告されている。上記のカリフォルニアでも、旱魃終息宣言の直前に大規模な豪雨となりダムが決壊寸前になるという、それまでとは真逆の事態に見舞われている。

古来より天候は人が左右できるものではなく、自然任せ地球任せにするしかないものだった。出来ることは、旱魃や豪雨・長雨が来た時に被害を減らす為に治水・灌漑その他諸々の対策をしておくことだった。

「天候を思い通りに操ることができたら」は、古くからの人類共通の願いの一つだったことは間違いない。

この願いが叶えられる可能性が出て来た。

米・セントラルフロリダ大学とアリゾナ大学の専門家チームが、レーザービームを放つことで雲の中の静電気を活性化させ、雨や嵐を発生させることが可能だ、と発表した。

 (図1)

ビームは放たれると、エネルギーを保管するように働く別のビームに覆われる。レーザーが拡散しないのはこの「外側」のビームの為だという。そして、レーザーが一定の強度を超えると通常とは異なる挙動を示すようになる。「内側」に向かって崩壊を始めるのだ。激しい崩壊で空気中の電子と窒素プラズマを作り出し、謂わば電子のスープのような状態が出来上がる。

レーザーは静電気を活性化させ、有る一点に達すると「外側」のビームを押し広げようとし、結果的にビーム自体が崩壊することになる。この「内側」と「外側」の鬩ぎあいが、ごく短時間だけ『フィラメント』と呼ばれる光の糸を作り出す。この『フィラメント』が励起電子を生み出し、これによって雨や雷、嵐の形成に不可欠な条件の種蒔き、クラウドシーディングを人為的に行うことができるというのだ。

実際に雨を降らせる為の方法として、『フィラメント』の延長ケーブルを作ることが考案されている。『フィラメント』を大きく、あまり強度の高くないドーナツ状のビームで巻き、ゆっくりと内側に向かって動かせば良い、と判明した。この方法なら、自在に長さを調整できる為遠方からでも容易にクラウドシーディングが行える可能性が大いにある、とのことだ。

現在、全く天候・気象操作が人工的に行われていない、というわけではない。2008年北京オリンピックの際に中国政府が人工降雨を行ったのは比較的記憶に新しい。ドライアイスやヨウ化銀を使った人工降雨は多くの国で実施されており、日本国内でも1964年の関東地方の大規模渇水の際に水源地付近で行われており、アメリカでは、気象調整を行う民間会社が複数存在している。

但し、この人工降雨は雨を作り出す技術ではなく、雨を降らせるタイミングを早める技術だ。雨雲が発生していなければ使うことはできず、また、豪雨被害の場所の雨を弱めたり、降るタイミングを遅らせることはできない。そして、タイミングを早めるだけ、ということは、本来雨雲が移動した先で降らせるはずだった雨を、先取りしているということだ。これを続ければ、他の場所が渇水することになる。国境を跨いでこれを行えば、大問題に発展することは必至だ。

また、気象は軍事にも深く影響する。ベトナム戦争時にアメリカ軍が雨季を長引かせる為に気象操作を行った例もある。現在は「環境改変技術軍事使用禁止条約」が締結されではいるが、この条約を作る必要があるということは、軍事利用が十分に考え得る、ということだ。

気象を自在に操作できれば得られるメリットは計り知れない。旱魃による飢餓で苦しんでいる国の人々にとっては何より嬉しい技術だろう。人類にとって有益に過ぎる程有益な技術であるだけに、使いどころを間違えず、良い方向に使って頂きたいものだ。

参考
*カラパイア
http://karapaia.com/archives/52246855.html
http://karapaia.com/archives/52246547.html
http://livedoor.blogimg.jp/karapaia_zaeega/imgs/e/a/eabbc2ec.jpg(図1)

*CLIMATE DEPOT
http://www.climatedepot.com/2017/09/28/scientists-able-to-control-the-weather-using-lasers/

*wikipedia
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/ja/thumb/9/91/20080814SekiranUn.JPG/800px-20080814SekiranUn.JPG(Top画像)

「執筆者:株式会社光響 緒方」