朝食にトーストを食べるとする。ポテトサラダを付けるのも良いかもしれない。その時に、ふと考えてしまったことはないだろうか。「このパンと芋は何処で作られ(収穫され)、どれだけの時間、何処で保管されていたのだろうか?」まぁ、あまり考える人はいないだろう。しかも朝の忙しい時間に悠長に食品の来歴に思いを馳せる暇なんぞ無い、という方が一般的だろうか。とは言え、もし、タグを直接貼り付けることの出来ない生の食品の詳細が分かるようになるとしたら、それは相当に便利だ。
米・テキサス州ライス大学でそれを可能にしそうな研究が進められている。
同大学James Tour教授の研究室のテーマは、「炭素を含有するものはなんでも、グラフェンになりうる」だ。このテーマに従い、レーザーを使って衣服の表面をグラフェン化させる実験等を行っている。なぜ、グラフェン化なのか。グラフェンの利用には多くの可能性が秘められているが、その一つにRFIDタグがある。物品や履歴の管理、流通等での活用が期待され、最近ではウォルマートが在庫管理に採用して注目を集めたあのシステムだ。今回発表されたのはその研究を食材に応用したものだ。こんがり焼けたトーストにくっきり黒いフクロウのペイント。これはチョコレートでもなければ食用インクでもなく、グラフェンだ。パンにレーザーを照射して正面をグラフェン化させている。
焦点をずらしたビームを使った複数のレーザーパルスで、LIGパターンを、ジャガイモやココナッツの表面やパン、布や紙にも書き込むことが出来る。因みに、パンは表面を炭化する為に、まずトーストされている。場合によっては複数のレーザーによる発振が2段階の反応を生むこともあり、まず、レーザーが対象の表面をアモルファスカーボンに変え、その後、レーザーの通過によって赤外光の選択的吸収がLIGに変えるという。また、ココナッツ等の素材では、レーザーの出力を上げるだけでは良質なグラフェンが作られないことから、レーザーの焦点をずらすことでココナッツの表面にグラフェンを作り出すことに成功している。この結果、焦点をずらすことで、他の多くの素材への作業プロセスも同様の手法でのスピードアップが可能となったとのことだ。
このグラフェンによるタグを食材に直接つけることで、消費者は何処で収穫され、何処で作られ、どれだけの間保管され、どんなルートを通って自分の所までたどり着いたのか、といった情報を簡単に知ることが出来るようになる。言うなれば、履歴書付の食材を手に入れられるのだ。その他、驚くべきことにグラフェンは、大腸菌や微生物に対するセンサーとして活躍する可能性を秘めている、というのだ。この人間の腹具合を怪しくしてしまう物たちを検知すると、グラフェンが発光して警告してくれる。これが実現すれば、食材自体がタグとしての機能を持つことになるわけで、食品衛生や食の安全向上に凄まじい効果を発揮するのではないだろうか。ウィルス等にも反応するように出来れば、脅威の繁殖力を持つノロウィルスなんかも、口にする前に判明したりしないだろうか、と期待したくなってくる。
ところでこのグラフェン、食べても大丈夫なのか気になるので、弊社の専門家K氏に聞いてみたところ、大丈夫とのこと。更に気になるお味の方は、炭素なので「焦げ」味か、鉛筆の芯的な味なのではないか、ということだが、こちらは未確認情報となっているので、悪しからず御了承頂きたい。
参考
*INTERNET COM
https://internetcom.jp/204295/graphene-on-toast
*RICE UNIVERSITY
*ACS NANO
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsnano.7b08539
https://pubs.acs.org/appl/literatum/publisher/achs/journals/content/ancac3/0/ancac3.ahead-of-print/acsnano.7b08539/20180213/images/medium/nn-2017-08539v_0008.gif (画像2)
https://stat.ameba.jp/news_images/20180218/13/a2/ci/j/o06600440graphene_on_toast2.jpg?cpc=212 (画像1)