忘れられていたミイラ250年ぶりに発見。CTとレーザースキャンで調査開始。

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間違えてしまったり忘れてしまったりというのは人間ならば仕方のないことだ。後で気づいて焦ったり赤面したりするのも間々あることだ。しかし、こんな盛大な勘違いはそうそう無いだろう。博物館で150年も展示されていた古代エジプトの空っぽの石棺が、実は中身入りだったなんて。

この大間違いの舞台になったのは、オーストラリアのニコルソン博物館だ。件の石棺は1860年にシドニー大学元学長チャールズ・ニコルソン氏が持ちこんだ約2500年前の第三中間期か末期王朝頃に作られたものだ。この時同時に3つの木棺も運び込まれていて、こちらには完全な状態のミイラが納められていた。要は「見栄えのする」棺だったことになる。恐らく当時の研究者たちの興味が「見栄えのする」方に集中してしまい、残念な中身だった石棺は後回しにされ、そのうちに中身が入っていることすら忘れ去られてしまったのではないだろうか。美術館の記録では「様々な破片入り」とされているが、1984年の便覧では中身は空っぽと記録されているのもその所為かもしれない。
この忘れられた石棺の転機は2017年に訪れた。ニコルソン博物館のキュレーター達が棺の蓋を開けてみたのだ。何故開けてみることになったのかは不明のようだが、兎に角、1860年に博物館に届けられてから初めて重い石の蓋が取り外され、包帯等と共に本物のミイラの一部が入っていることが発見されることになった。

その時の衝撃をキュレーターの一人は、「信じられない程驚いた。息を止めて立ち尽くすしかない瞬間だった」と語っている。

断層撮影法とレーザースキャンによって棺とその中に残されていた「様々な破片」たちは記録・予備分析され、今後、詳細な調査が進められていくことになる。新発見となったミイラの状態は非常に劣悪で、墓荒らしに宝石や貴金属を漁られた可能性が高いという。

しかし、その決して良いとは言えない保存状態の中から、埋葬用ショールに取り付けられた7,000個余りのビーズ、包帯、樹脂編、胴体と足の骨と下肢骨、鋤骨数本を特定することができた。そこから、棺の中の人物は30歳前後だということが判明している。しかし、この人物がこの石棺の元々の主なのかというと、そう断言することは難しい。
棺に刻まれた銘文から棺の主はメル・ネイス・イト・エスという女性神官で、ライオンの頭を持つ女神・セクメトの神殿で働いていた、ということが分かっているが、亡骸の人物がメル・ネイス・イト・エス女史であるかどうかの確証は得られていない。石棺のヒエログリフの手掛かりから、ミイラの製造手順や棺の様式により、セクメト神殿がどう機能していたかを推察することができそうだ。また研究者達は、この亡骸のライフスタイルや食生活を調べると共に病歴や死因の特定にも繋げていきたいと考えているようだ。

普通は遺跡から発見されているミイラが博物館で見つかる、というのはなかなか無い事態だろう。石棺の主と亡骸の正体含め、今後の研究成果が待たれるミイラなのではないだろうか。

参考
*GIZMODO
https://www.gizmodo.jp/2018/04/egyptian-coffin-actually-contains-mummy.html
https://assets.media-platform.com/gizmodo/dist/images/2018/03/29/180329mummy-w1280.jpg (Top画像)
https://assets.media-platform.com/gizmodo/dist/images/2018/03/29/180329mummy3.jpg
(画像1)
https://assets.media-platform.com/gizmodo/dist/images/2018/03/29/180329mummy2.jpg
(画像2)

*BBC
https://www.bbc.com/news/world-australia-43550496

執筆者:株式会社光響  緒方