グリーンランドに異常事態。氷河が融けて池が出現。オペレーションアイスブリッジによるレーザー/レーダー計測で観察。

地球温暖化が取り沙汰されるようになって随分になるが、近年は本当に深刻な事態となってきているようだ。海抜の低い太平洋の島々はリアルに水没の危機が、温暖化に伴う気候変動によりアフリカ諸国や中東、東南アジア等世界各地で不規則になった降雨状況の為に、深刻な農業被害に晒されている。まだ大丈夫、まだ大丈夫、と先送りにしてきたツケはそろそろ取り返しのつかない地点まで来てしまっているのではないだろうか。
この不安感に追い打ちをかけるような状況がグリーンランドから齎されている。アイスランド最大の氷河が溶け、大量の水が流れ出しているというのだ。

NASAは、南極・北極周辺の氷河や氷床を高精度レーザー/レーダーを使って観測するミッション、オペレーションアイスブリッジの一環として、グリーンランド一帯の氷河・海氷の監視を行ってきた。グリーンランドではここ20年の間に氷の融解ペースは加速度的に早まっているのだ。氷河は凍ったままというわけではなく、夏が来れば多少は融けるものだ。例年であれば6月頃には融け始める。しかしNASAの発表によると今年は5月初旬には既に本格的に融けはじめており、既に氷河の中に池が出来ている状態だという。下が公開された写真だ。


(図1)

融けた氷が池になってしまっているのが良く分かる。グリーンランドは地球上で最も寒冷な地域の一つだが、5月初旬時点の気温が10~15.6℃にも達している。例年の平均気温は-5~0℃の地域だ。尋常でない異常気象だと言っていいだろう。
更に、この融けはじめた氷河「ヤコブスハブン氷河」の位置も問題となっている。グリーンランド中西部に位置するこの巨大氷河は最も移動速度が速い氷河で、その厚さは1.6kmにもなる。グリーンランドの氷山の約10%を締め毎年350億tもの氷山をフィヨルドから運び、海からグリーンランド中部までを貫くような形のこの氷河が研究者達からの注目を集める理由は、このヤコブスハブン氷河が、長い運河に溜まっている膨大な量の氷を堰き止める為の、謂わば「蓋」の役割を果たしているからだ。これが失われるということは、氷床の残り部分が大量に流出するということに他ならない。

ヤコブスハブン氷河の氷の移動速度は1日当たり46m。90年代と比較すると3倍の速度に達している。グリーンランド全体では、氷床の氷は年間約2500億tが消失し、氷の喪失速度は観測開始の1980年代と比べれば6倍にも達しているのだ。また、気温上昇によって内陸部の氷も融けだし、それに伴って海面の水位も少しずつ押し上げられ続けている。
2019年の夏はまだ来ていない。これから訪れる暑い季節に大量の氷が失われてしまうということは間違いが無さそうだ。

最後に、海面上昇によって水没の危機に晒されてきた太平洋の島国ツバルが予想外の展開を迎えている。世界平均の2倍のペースで海面が上昇し続けているが、なんと国土が拡大しているというのだ。1971年から2014年までの地形の変化を分析したところ、8つの環礁と、約4分の3の岩礁で面積が広くなっており、同国の総面積は2.9%拡大していることが分かった。これは波のパターンや嵐で打ち寄せられる堆積物等諸々の要因が海面上昇による浸食を相殺した結果ではないかと考えられている。と言っても危機が去ったわけではなく、温暖化とそれに伴う異常気象/海面上昇への対策が急務であることに変わりはないが。

参考
*カラパイア
http://karapaia.com/archives/52274186.html
http://livedoor.blogimg.jp/karapaia_zaeega/imgs/b/f/bf31ddb2.jpg (図1)

*AFP
https://www.afpbb.com/articles/-/3161922

執筆者:株式会社光響  緒方