ポイント
- シリコンフォトニクスによる高性能光スイッチを用いた光ネットワークの実運用を都内で開始
- 超低消費電力の回線交換型大容量光ネットワークの実現が可能
- 4K/8K超高精細映像の低遅延伝送による遠隔共存の実現に期待
概要
国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)データフォトニクスプロジェクトユニット【代表 並木 周】は、ダイナミック光パスネットワークと呼ばれる新しいネットワーク技術の開発を進め、今回そのテストベッドを東京都内に構築し実運用を開始した。従来の光ネットワークでは、電子ルーターを用いているため、通信量に比例して消費電力が増大する。一方、今回のシステムでは、光スイッチにより信号を光のまま振り分けるため、通信量によらず超低消費電力で通信できる。また、4K/8Kなどの超高精細映像を遅延少なく非圧縮伝送でき、それによって実現する遠隔共存は、医療や教育、産業などの幅広い分野で革新を引き起こすほか、AR/VRなどを活用したeスポーツなどの新産業創出の契機になることが期待されている。今回のテストベッドは都内の既設の未使用光ファイバーを利用した。ユーザーの要求に基づき、任意のユーザー間を光回線(光パス)でつなぐ回線交換型の光ネットワークである。数万人規模のユーザーに対応するには高性能な光スイッチが多数必要となる。シリコンフォトニクス技術による光スイッチは、信頼性が高く、小型・低消費電力で大量生産に適しているが、実用面での課題が多く、これまで実験室での検証にとどまっていた。今回、光スイッチの多くの課題が解決でき、実環境で安定に動作するレベルに達したため、今回のテストベッド実運用を初めて実現した。この技術の詳細は、国内外の学会などのほか、10月3~6日に幕張メッセ(千葉県幕張市)で開催されるCEATECで技術展示される。
ダイナミック光パスネットワークの概念図
開発の社会的背景
今日、情報通信ネットワークを介したサービスは多様化しさまざまなイノベーションが生まれている。とりわけ進展が著しいのは映像を利用したサービスであり、映像機器の進展も著しく、精細度ではHDから4Kさらには8Kへと向上しつつある。8Kは初めて人間の視覚を超えたデジタル映像技術であり、かつて無い臨場感や没入感が得られる。これら映像技術と大容量ネットワークを組み合わせると、遠隔地の人々があたかも同じ場所にいるような感覚でコミュニケーションできる遠隔共存が可能になる。一方、インターネットの通信量は動画コンテンツの増加などにより年30~40 %の割合で増え続けている。これに伴う電子ルーターの消費電力の増加は、通信量上昇のボトルネックになると予想されている。また、インターネットは、現在、帯域の保証が無く、遅延の発生や変動が避けられない。遠隔共存の実現に向けて、これらの問題点を解決し巨大な超高精細映像情報を効率良く快適に扱える新しいネットワークが望まれている。
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