セミアクティブ・レーザー誘導とセミアクティブ・レーダー誘導を切り替え可能。米陸軍、新型空対地ミサイル『JAGM』運用試験開始

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米軍のレーザー兵器導入が相次いで発表されているが、今回も米軍、陸軍による新型対地ミサイルJAGM(Joint Air-to-Ground Missile)の運用試験が開始された、との発表があった。

現行の対地ミサイル「BGM-71TOWC発射筒型有線式光学誘導弾」や、AGM-114ヘルファイア、AGM-65マーベリックの後継として開発されてきた『JAGM』は、レーザーで直接敵を攻撃するレーザー兵器ではなく、所謂ホーミング・ミサイル(誘導ミサイル)だ。誘導ミサイルには大きく分けてパッシブ式、アクティブ式、セミアクティブ式があるが、『JAGM』はセミアクティブ・レーダー誘導(SARH)とセミアクティブ・レーザー誘導(SALH)を両立する設計となっている。SARHは発射母体が目標に対してレーダーを照射し反射波をシーカーが捉えて追跡する。SALHはレーザー目標指示装置から目標に対してレーザー光を照射。反射光を捉えて反射した信号の中心に向かってミサイルが飛ぶ。敵の立場に立てば、狙われていることを察知するのが非常に困難なシステムである反面、撃つ側には着弾するまで目標にレーザーを照射し続けなければならず、回避行動をとれない、つまり返り討ちの可能性あり、というデメリットがある。
しかし『JAGM』はレーザー誘導でミサイルを発射した後に、目標を直接視界にとらえなくても良いレーダー誘導に変更出来る為、反撃があったとしても攻撃を続けながら回避を行えるシステムとなっている。また、現行で使用されているヘルファイア(射程距離9,000m)より有効射程距離が長く、目標までの距離を取ることができ、より安全に攻撃が可能になると見られている。また、レーザー誘導式のミサイルは、発射した時の煙や火薬の燃え残りのチリなどでレーザーが拡散され目標を喪失する可能性があったが、その問題もJAGMであれば解決可能だ。これまでは、失敗の可能性を見越して複数発発射していたミサイルを1発で済ませることが出来る、とのこと。更に、天候に左右される問題も両システムの切り替えが解決してくれるのだ。

試験はアリゾナの砂漠地帯で実施されており、砂埃の舞う戦場に近い環境でのテストと言える。実戦に近い状態で行う為、遠隔操作されたT-72戦車を標的として使用しているという。試験はAH-64アパッチを使用して行われているが、『JAGM』の正式名称「Joint Air-to-Ground Missile」からも察せられるように、将来的には海軍・空軍での使用を前提にしており、海軍のMH-60シーホーク、海兵隊のAH-12ヴァイパー、MQICグレイイーグル(無人機)等でも今後試験が行われる予定となっている。

多方面で共有できる機体開発を目的とした統合打撃戦闘機計画によって開発されているF-35は開発期間の長期化、費用の高額化に見舞われたが、JAGMはどうだろうか。実戦配備されれば大きな戦力となることは間違いない。今後の情報を待ちたいところだ。

最後に、『JAGM』はセミアクティブ式誘導システムだが、アクティブ式はハープーン、アムラーム等に採用されている。ミサイル自体に追尾機能があり所謂ファイア・アンド・フォーゲット/撃ちっ放し機能を持つ反面、多機能をミサイル本体に詰め込むことへの負担、高性能で高価な誘導システムをある意味一発ごとに使い捨てることでの高額化、という問題を抱える。ハープーンは1発で1億円前後だ。『JAGM』の価格は一体いくらになるのか。少しでも抑えて欲しい、というのが米軍お偉方達の本音ではないだろうか。

参考
*おたくま経済新聞
http://otakei.otakuma.net/archives/2018022202.html
http://otakei.otakuma.net/wp/wp-content/uploads/2018/02/301cd1195ae483bd36e91dfcab88823e.jpg (Top画像)

執筆者:株式会社光響  緒方