SFや未来設定の映画なんかで良く出てくる極小の虫型ロボット。狭いところや家の中、森の中でも藪の中でも何処にでも飛んで行けて、秘密基地や悪の本拠地に忍び込むのも楽々と、という大変に便利且つ使い方次第で犯罪グッズにもなりかねない空想科学アイテムが、ついに現実世界で完成してしまうかもしれない。開発しているのはワシントン大学で機械工学を研究するソーヤー・バックミンスター・フラー教授らの研究チームだ。彼らの発表によると、極小の光電池パネルを搭載してレーザーによる充電を行うことで、ケーブルで接続しておく必要がなく、自由に飛び回れる小型のハエ型ロボットの開発に成功したというのだ。
昆虫型ロボットに関するニュースは別に今回が初というわけではない。その有用性から、研究している企業や大学は多い筈だ。2016年にはハーバード大学で、水陸両用の昆虫型ロボ「RoboBee」が開発され話題を集めたこともあり注目度は常に高い。しかし、こういった極小の昆虫型ロボットには避けて通れないにも拘らず、解決が非常に難しい問題がある。「バッテリー問題」だ。
ロボット自体が非常に軽量で、上記の「RoboBee」もその重さは僅か0.1g。バッテリーを搭載する隙など全く無い。その為、「RoboBee」を飛ばせるには、常に電源コードを繋いでおいてやる必要があったのだ。飛行する昆虫型ロボットの利点は、自由に飛べて人間やドローンの入り込めない場所の調査や観測、偵察を行えることだ。紐付きでしか飛べないなんてことでは正直使いようが無い。
この最重要課題を堂々解決したのが今回の研究だ。開発されたハエ型ロボは、回転機構を使わない。自然界にいる昆虫や鳥類のように羽ばたくことで空を飛ぶのだ。この小さな機械仕掛けの昆虫は、モーターを使った同様のロボットよりも消費電力は少ない。それでも、空を飛ぶためには相当な量の電力が必要となり、市販されている電池ではとても賄えないし、大きなサイズの電池は勿論使えない。極小の補聴器用乾電池ならばちょうど良いサイズだが、やはり電力不足だった。そこで採用されたのがレーザーによる電力供給だ。携帯電話の充電などで最近よく耳にする技術だ。このレーザーからハエ型ロボットは7Vの電力を、光電池パネルを通して供給される。7Vでは飛び立つには足りないが、内蔵されたサーキットにより240Vに昇圧して離陸するのだ。
*The first wireless flying robotic insect takes off
バッテリーが搭載されていないので、常にパネルに向かってレーザーを照射しなければならず、実験中は固定してレーザーが照射されているので、ハエ型ロボットが少し動くと狙いが外れて供給が止まり、着陸してしまっている。近いうちに、レーザーで動きを追跡できるようにして、自由に飛行できるようにしていく予定だという。また、将来的には、小型バッテリーを搭載したり、無線周波数信号を動力源としていくことを考えているとのことだ。実現すれば、細い配管内部の調査や、人間や大型のドローンでは立ち入りが困難な場所の調査、或いは映画等で見るようにスパイ活動にさえ使える可能性がある。使い道を深く追求すると怖い気もするが、実に楽しみな技術の一つと言えるだろう。
*WIRED
https://wired.jp/2018/06/04/insect-sized-flying-robot/#galleryimage_401734-2653_2
*Discovery
http://news.line.me/articles/oa-dnews/2fbe8cad1cd0
https://japan.cnet.com/storage/2018/05/16/999a6d6a60e5047cfaf7f4438c0bb3dd/2018_05_16_sato_nobuhiko_022_image_01.jpg (Top画像)
執筆者:株式会社光響 緒方https://optinews.info/wp-admin/post.php?post=5250&action=edit#