プラズマ誕生の瞬間を観測/国際チームが X線自由電子レーザー照射によるプラズマ生成機構を解明

【研究のポイント】
・高強度X線自由電子レーザー照射によるプラズマ誕生の瞬間を観測。
・実験と理論計算により高強度X線照射プラズマ生成機構を解明。

【概要】
東北大学多元物質科学研究所 上田潔教授・福澤宏宣助教のグループ、京都大学大学院理学研究科 永谷清信助教のグループ、ドイツのハイデルべルグ大学のローレンツ・セダーバウム教授のグループ、広島大学大学院理学研究科 和田真一助教のグループ、理化学研究所放射光科学研究センターXFEL研究開発部門ビームライン研究開発グループ 矢橋牧名グループディレクター及び高輝度光科学研究センターXFEL利用研究推進室先端光源利用研究グループ実験技術開発チーム 登野健介チームリーダー等による合同研究チームは、X線自由電子レーザー(XFEL)施設 SACLAから供給される非常に強力なX線の照射によって、物質からプラズマが誕生する瞬間を捉えることに成功しました。XFELはわずか10フェムト秒(1フェムト秒は千兆分の1秒)の照射時間という極短パルスを生成する超高強度 X 線源です。XFELを用いるとこれまでは見ることが出来なかった超高速・超微細な現象を見ることができるため、ライフサイエンスやナノテクノロジー・材料分野をはじめとする幅広い科学技術分野でXFELの利用研究が期待されています。XFELを物質に照射すると、物質の種類を問わず、プラズマが生成します。XFELの有効利用のためには、このプラズマ生成機構とその時間スケールを知ることが不可欠です。今回の研究では、プラズマの誕生の瞬間に着目し、XFEL照射後、わずか数百フェムト秒の短時間で起こるプラズマ生成過程を観測することに成功しました。また、理論計算で観測結果を再現し、励起原子がプラズマ生成のごく初期段階におけるエネルギーと電荷の移動に重要な役割を担っていることを明らかにしました。本研究で得られた超高強度 X 線と物質との相互作用が誘起する超高速現象に関する新たな知見は、今後のXFEL利用研究に不可欠であると思われます。本研究の成果は、2018年8月2日午前10時(米国東部夏時間)に発行された米国の科学雑誌『Physical Review X』に掲載されました。

【詳細な説明】
1.背景
XFELは、わずか10フェムト秒の照射時間という極短パルスの高強度X線です。XFELの誕生により、これまでは見ることが出来なかった超高速・超微細な現象を見ることができるようになりました。そのため、ライフサイエンスやナノテクノロジー・材料開発をはじめとする幅広い分野で、XFELを利用した新たな科学技術の創出を目指し、世界中の研究者がXFELを利用して活発に研究を進めています。しかし、このような XFEL利用研究を推進するためには、高強度X線を物質に照射した際に起こる反応過程を理解しなければなりません。XFELの照射が物質に引き起こす代表的な現象の一つとして、プラズマ生成が挙げられます。数千個の原子の集合体であるクラスターにXFELを照射するとナノメートル(1 ナノメートルは10億分の1メートル)サイズの微小空間内に正の電荷と負の電荷が混在する(ナノプラズマ)が生成します。X線照射により、初めに原子から内殻軌道の電子が剥ぎ取られます。内殻電子を失った原子は高いエネルギーを保有し、不安定であるため、さらに複数個の電子を段階的に放出し、エネルギー的に安定した多価の原子イオンになります。SACLAから供給される高強度X線をクラスターに照射すると、クラスター内の多数の原子から大量の電子が放出され、ナノプラズマが生成します。このXFELの照射によるプラズマ化現象は、あらゆる物質で起こる過程ですが、あまりにも早く起こる過程であるため、その詳細は明らかにされていませんでした。本研究では、XFEL照射によってクラスターからナノプラズマが生成するまでの超高速過程を捉え、その詳細な生成機構(図1)を解明しました。

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