ガラスのレーザー加工を従来の5000倍の速さで実現

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1.発表者:
伊藤佑介 (東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻 博士課程3年)
吉﨑れいな (東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻 修士課程2年)
宮本直之 (東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻 修士課程1年)
杉田直彦 (東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻 教授)

2.発表のポイント:
◆フェムト秒レーザー光で瞬間的に形成した電子密度の高い領域に透過波長レーザー光を吸収させることで、従来の5000倍の速さでガラスの精密加工を実現しました。
◆ガラス材料のレーザー加工は加工速度が極めて遅いという課題と精密加工が困難であるという課題を抱えていましたが、それらの課題を同時に解決することに成功しました。
◆本技術は多くの材料に適用可能であり、電子機器や光学機器の高性能化や低コスト化に貢献すると期待されます。

3.発表概要:
東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻の伊藤佑介大学院生、杉田直彦教授らは、ガラスの微細精密加工を従来の 5000 倍の速さで実現するレーザー加工技術の開発に成功しました。電子機器や光学機器の高性能化のためにガラス材料に微細加工を施す技術の開発が求められています。ガラス材料に微細加工を施す技術としてフェムト秒レーザー加工が注目されており、加工性能の向上を目指した研究が盛んに行われています。しかしガラスのフェムト秒レーザー加工には加工速度が極めて遅いという課題と加工時にクラックができるために精密加工が困難という課題が存在しており、実用化に大きな障壁がありました。本研究グループは、フェムト秒レーザー光で瞬間的に形成した電子密度の高い領域に透過波長レーザー光を吸収させることで、従来技術の5000倍の加工速度を達成し、なおかつクラックの存在しない精密加工を実現しました。この技術はガラスに限らず多くの材料に適用可能であり、今後電子機器をはじめとする多くの製品の高性能化、低コスト化に貢献すると期待されます。

4.発表内容:
<研究の背景>
電子機器や光学機器のさらなる高性能化・低コスト化を実現するために、ガラス材料の微細加工を高速かつ精密に施す技術が求められています。特に微細な加工が可能な技術としてフェムト秒レーザー加工が注目されています。フェムト秒レーザーは通常のレーザーと異なり、フェムト秒という極めて短い時間(1フェムト秒は1000兆分の1秒)で材料にエネルギーを送り込むため、ガラスのような透明な材料に対しても光を吸収させることができ、微小形状を作り出すことができます。しかし、ガラスのフェムト秒レーザー加工は2点の重大な課題を抱えています。1 点目は加工能率の低さです。1パルスのフェムト秒レーザーで作り出せる形状は極めて小さいため、所望の形状を得るためには多数のパルスを照射する必要があり、パルス数の増加に応じて加工時間が増大し、加工能率が低下します。2点目は加工精度の低さです。フェムト秒という極めて短い時間にエネルギーが投入されることで、材料が急激に膨張し材料内部に応力波が伝搬します。多数のパルスを照射する場合、パルス数と同等の数の応力波が形成されます。多数の応力波が材料内部に伝搬する過程でガラス材料には強い引張応力が分布し、クラックが生成されるため精密な加工が妨げられます。これらの課題の解決を試みる研究が盛んに行われていますが、2点を同時に解決する有効な手法はありませんでした。

<研究内容>
今回、東京大学の伊藤佑介大学院生、吉﨑れいな大学院生、宮本直之大学院生、杉田直彦教授からなる研究グループは、フェムト秒レーザー照射後に材料内部に瞬間的に形成される高電子密度領域(図1)に透過波長の長パルスレーザー光を吸収させることによって、微細形状を従来の 5000倍という超高速で、なおかつクラックなく精密に作り出す技術の開発に成功しました(図2)。本手法では、ガラスに対して透過波長を有するフェムト秒レーザーをガラス材料内部に集光し、材料内部の光の進路に沿った領域中に瞬間的に電子を励起(れいき)させ、高電子密度領域を形成します。高電子密度領域では光の吸収率が上昇することに着目し、通常であればガラスを透過する波長を有する長パルスレーザー光を高電子密度領域にのみ選択的に吸収させることで、直径10µm、深さ約150µm の微細孔を 0.04msの加工時間で形成しました。同等の微細形状を従来技術(1 kHzで発振するフェムト秒レーザー)で加工する場合には200msの加工時間を要します。高電子密度領域は一定時間を経ると緩和して消失しますが、消失前までであれば長パルスレーザーのパルス幅を制御することによって吸収させるエネルギー量を調整し加工形状を制御できることが可能です。本手法における材料の除去過程は長パルスレーザーによる熱的な蒸発が支配的であるため、フェムト秒レーザーパルスを多数照射した場合のような多数の応力波は発生せず、材料内部にはクラックが形成されません。このように、瞬間的に形成される高電子密度領域を活用することにより、ガラス材料への微細加工を超高速かつ精密に施す技術を確立しました。

<研究の意義、今後の展望>
本研究では従来技術では困難であったガラス材料の高速かつ精密な微細加工を実現しました。本手法はガラスの微細加工技術を必要としている電子機器や光学機器をはじめとする多くの製品の高性能化、低コスト化に貢献すると期待されます。さらに本技術は原理的にはガラスに限らず、様々な非金属材料に対して適用することが可能であることから、今後より広範な領域で活用されるであろうと期待されます。

添付資料:

出典:https://www.t.u-tokyo.ac.jp/shared/press/data/setnws_201808071041048082732185_965825.pdf

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