【発表のポイント】
- 地層中の炭酸塩鉱物は、過去の地下水環境の変遷を知る手がかりとして重要な情報が保存されている “地下水の化石”とも呼べる鉱物。
- 炭酸塩鉱物中の沈殿層ごとの成分や年代を知るためには、マイクロメートルサイズの微小領域(髪の毛の太さほど)を測ることができる局所分析技術の開発が求められていた。
- 原子力機構は、海洋研究開発機構、(株)京都フィッション・トラック、東京大学、学習院大学と共同で、分析条件を検討し、分析可能な領域を判別する同位体イメージング技術などを用いて炭酸塩鉱物の年代測定に係る課題を克服し、局所分析技術の開発に成功。
- 本研究成果は、炭酸塩鉱物の微小領域の年代を測定した国内初の事例であり、今後の応用研究により、地層処分における地質環境の長期安定性の評価技術の高度化や古環境の復元に係る科学的研究の発展に貢献。
【概要】
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄)東濃地科学センターネオテクトニクス研究グループの横山立憲研究員らは、海洋研究開発機構、(株)京都フィッション・トラック、東京大学、学習院大学と共同で、炭酸塩鉱物の微小領域を対象とした年代測定技術を開発しました。この研究は、地層処分技術における地質環境の長期安定性に関する研究の一環として、経済産業省資源エネルギー庁の委託事業(地質環境長期安定性評価確証技術開発)の中で行ったものです。炭酸カルシウムなどの炭酸塩鉱物は、地下では岩石と地下水が反応し沈殿してできることから、沈殿時の地下水の化学組成などの情報が炭酸塩鉱物中に含まれる成分の違いとして保存されます。そのため、“地下水の化石”とも呼べる鉱物です。炭酸塩鉱物から過去の地下水の水質や流れる水みちの変化を知るためには、年輪のような沈殿層ごとの成分や年代を調べる必要があり、従来の化学的処理に代わるマイクロメートルサイズの粒子や領域を測ることができる局所分析技術の開発が必要でした。この技術の開発では、年代測定結果の補正に必要な標準試料が欠如していることや、分析可能な領域の選択などに課題がありました。本研究では、局所分析を可能とするため、レーザーアブレーション装置を試料導入部に備えた誘導結合プラズマ質量分析装置を用いました。また、標準試料については、既知の候補試料の適用確認とともに、標準試料を必要としない分析条件の検討を行いました。さらに分析可能な領域の選択のため、試料中の元素や同位体の分布情報を二次元的に画像化する同位体イメージング技術を適用しました。
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