空想科学の中か未来の話だと思われてきたレーザー砲の実現が、冗談抜きで間近に迫っているようだ。
ロッキード・マーティン社のプレスリリースによると、米海軍から1億5000万ドルで2種類のレーザー兵器システムの開発製造を受注。1つは駆逐艦搭載型でアーレイ・バーク級イージス艦のシステムに組み込まれ、もう1つは固定タイプで、ホワイトサンズ・ミサイル実験場で試験運用される予定だという。
2021年にはイージス艦に搭載予定のレーザーシステム「HELIOS」(High Energy Laser and Integrated Optical-dazzler with Surveillance:ヘリオス)は、60kw~150kwという高出力レーザーによる攻撃だけでなく監視と妨害という3つの用途をこなす新型の兵器システムだ。攻撃対象は主としてドローンや小型船舶を想定し、対象を焼き尽くして破壊する程の攻撃力を有する予定だ。
プレスリリースより
https://mma.prnewswire.com/media/648261/Lockheed_Martin_HELIOS_system.jpg?w=2700
プレスリリースに掲載された予想図では放たれたレーザー光が無人機を撃破する様子がCG化されているが、実際にはSF映画のような光線は無く、音も気配も無いレーザーによる攻撃が可能になると期待されている。2019年3月に開かれた「指向性エネルギーサミット」で、米海軍の開発担当者は開発が順調であることをアピール。「敵艦を焼き尽くすテクノロジーは前進している」と発言している。
「HELIOS」開発にあたっての最大の問題点は、センサーと機能と攻撃能力の両立だった。また、1km先の敵機を撃墜するには高出力レーザーを可能な限り収束させなければならない。その為「HELIOS」は微妙に波長の異なるファイバーレーザーを100本近く混合する「スペクトラル・ビーム・コンビネーション」という技術を活用している。
現在は既存のイージスシステムとヘリオスシステムの整合性をとる研究が進められており、現段階で使用されている近接防御システムとの置き換えや、実戦投入時の両システムの連携をスムーズに取れる方法が模索されている。
「HELIOS」はこの他、監視・偵察能力を持つことに加え、「Dazzler(ダズラー)」と呼ばれる低出力レーザーで敵ドローンのカメラやセンサーを混乱させる光学的妨害機能も兼ね備えているという。
無人小型兵器の台頭が著しい昨今、安価で扱いやすこの手の兵器は世界各国の軍だけでなく、小規模な団体や武装グループが自爆型のドローンとして運用しているという実例もあり、対策は急務だ。かといって、一機あたり数10$の自爆ドローンを一発あたり数千万$のミサイルで撃ち落とす、というような対応は正直現実的も予算的にもやっていられない。軍事もまた費用対効果抜きに考えることはできないのだ。レーザー砲は一発(?)あたり1$ともそれを下回るとも言われており、武装グループでも量産可能なドローンへの対抗手段として、費用的にも存分に役立ってくれることもまた期待されている。
米海軍揚陸艦「ポンス」20kwのレーザー砲を搭載しペルシャ湾で試験運用を行い、陸軍も攻撃ヘリ「AH-64アパッチ」へのレーザー兵器の搭載実験に成功している。今後、レーザー兵器が線状の主力となる未来が、いよいよ現実のものとなっていくのかもしれない。
参考
*newsphere
https://newsphere.jp/world-report/20190327-3/2/!--NoAds-->
https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/newsphere.jp/wp-content/uploads/2019/03/27185119/Laser_Weapon_System_aboard_USS_Ponce.jpg(Top画像)!--NoAds-->
*Lockeedmartin
https://news.lockheedmartin.com/2018-03-01-Lockheed-Martin-Receives-150-Million-Contract-to-Deliver-Integrated-High-Energy-Laser-Weapon-Systems-to-U-S-Navy
https://mma.prnewswire.com/media/648261/Lockheed_Martin_HELIOS_system.jpg?w=2700(図1)
執筆者:株式会社光響 緒方