(医療関連)レーザー光内視鏡が除菌後の胃がんリスクを明らかにする

~Linked color imaging による除菌後胃がんリスク評価に関する論文掲載について~

京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学研修員 間嶋淳、助教 土肥統、准教授 内藤裕二、教授 伊藤義人らの研究グループは、レーザー光による画像強調内視鏡観察(Linked color imaging)がピロリ菌除菌後に発見される胃がんのリスク評価に有用であることを明らかにし、本件に関する論文が、科学雑誌『Gastrointestinal Endoscopy』の2019年11月号に掲載されましたのでお知らせします。

【論文概要】
1.研究分野の背景や問題点
現在、本邦において胃がんは罹患数が2番目に多いがんです。多くの胃がんの原因はピロリ菌であり、胃がん予防のためにピロリ菌の除菌が有効であることがわかっています。しかし、ピロリ除菌後にも胃がんが発症すること(除菌後胃がん)がしばしばあり、除菌後胃がんによる死亡を減少させるためには、そういった胃がんの発症リスクが高い人を明らかにする必要があります。
近年、内視鏡検査で胃粘膜の状態を評価すること(内視鏡所見)で胃がんのリスクを判定する方法が注目を集めています。内視鏡機器の技術革新はめざましく、より正確に消化管のがんを発見し診断することなどを目的として、様々な特殊光による観察(画像強調観察)が開発されています。2012年には富士フイルム株式会社がレーザー光源を用いた内視鏡システムを開発し、画像強調観察であるLinked color imaging (LCI)モードが日常臨床に応用されるようになりました。本研究グループはこれまでに、通常観察と比較して、LCIを用いることによりピロリ菌感染を示唆する内視鏡所見を認識しやすくなることを報告しております(Dohi O, et al. Endosc Int Open, 2016.)。しかし、この新しい画像強調観察であるLCIを用いた内視鏡所見によるピロリ除菌後の胃がんリスク評価についてはあまり報告がないのが現状です。

2.研究内容・成果の要点
今回の研究では、ピロリ除菌後に京都府立医科大学附属病院で胃がんスクリーニングのために胃カメラを受けられた患者さんを対象に、除菌後胃がんが見つかった症例(109人)と除菌後胃がんがない症例(85 人)の内視鏡所見の違いについて比較を行いました(図1)。


除菌後胃がんが見つかった症例に多く見られる内視鏡所見を解析することで、ピロリ除菌後に胃がんが発症するリスクを判定することを目的としました。結果は、除菌後胃がんが見つかった症例では有意に「地図状発赤」という所見がみられ、逆に除菌後胃がんがない症例では有意に「regular arrangement of collecting venules(RAC)」という所見がみられるというものでした。「地図状発赤」がある症例は、「地図状発赤」がない症例に比べて、3.6倍も除菌後胃がんが見つかることも明らかになりました。さらに「地図状発赤」は、通常のモード(白色光、white light imaging; WLI)を使って観察するよりも LCI を用いる方がより正確に評価ができるという結果でした(図3)。

3.今後の展開と社会へのアピールポイント
これまでもピロリ除菌後の胃がんのリスクとなる内視鏡所見の報告はありましたが、今回新たに地図状発赤がリスクであることがわかりました。さらに地図状発赤についてはLCIを用いる方が見やすく、これまで通りの観察では胃がんのリスクを過少評価してしまう可能性が示唆されました。本研究成果により、LCI を用いた胃がんリスクの正確な評価が日本だけでなく世界に広がり、最終的にそのことがより多くの胃がんの早期発見・治療につながることが期待されます。

出典:https://www.kpu-m.ac.jp/doc/news/2019/files/22475.pdf

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