(レーザー関連)日立金属株式会社他/金属積層造形向けマルチスケール統合シミュレータ「AM-DT」を開発

2022年11月17日
日立金属株式会社

~金属積層造形を仮想空間(デジタル空間)上で再現~

日立金属株式会社(以下 日立金属)は、シンガポールA*STAR(科学技術研究庁)の Institute of High Performance Computing(以下 IHPC)と共同で、金属積層造形*1向けマルチスケール*2統合シミュレータを開発しました。これにより、金属積層造形を仮想空間上で再現(デジタルツイン*3を実現)して、製品設計、造形方案開発、品質設計から評価までを仮想空間においてワンストップで行うことを可能としました。これにより金属積層造形の用途の拡大、普及に貢献します。

1.背 景
金属積層造形品は一品一葉の製造プロセスでつくられるため、造形品の機能評価をする手段が限定的でした。そのため、設計に必要な情報等が得られないことから、用途の拡大を妨げる要因となっていました。そこで、日立金属とIHPCは、金属積層造形品の機能評価をデジタルで行うことで、設計に必要な情報を得られるようにすることをめざすことにしました。
日立金属とIHPCは、2018年にIHPCが保有している高度なシミュレーション・解析技術を応用して、金属積層造形のデジタルツインを実現する共同プロジェクトを立ち上げ、これまで開発に取り組んでまいりました。

2.概 要
今回開発した統合シミュレータAdditive Manufacturing Digital Twin(以下 AM-DT)は、金属積層造形における金属粉末投入、レーザーなどによる局所溶融、急冷凝固、製品冷却に至るそれぞれの物理現象をそれぞれに合わせた異なるスケールでコンピューターシミュレーションすることを可能とします。これにより、造形時の温度履歴や造形品の材料組織・欠陥・機械特性、造形後の変形・残留応力の予測が可能となります。このシステムは金属積層造形品のすべての部位の特性を予測できるため、より実体に近い評価や、お客様が金属積層造形品を使用する前提で実施する輸送機器、機械設備、化学プラント等のシミュレーション(アッセンブリコンポーネントで実施するデジタルツイン)のためのデータの提供が可能となり、これまでにないデジタル空間でのシステム評価が可能となります。
この成果により、金属積層造形品を構成部品として設計段階から組み込むことが可能となり、金属積層造形品の普及に大きく貢献することが期待されます。

3.特 長
1)マルチフィジックス*4プロセスに対応するため IHPC で独自にカスタマイズされたコード*5を使用
2)部品スケールと粉末スケールの両方で情報を取得するためのマルチスケール統合アーキテクチャ*6
3)空隙率、微細構造、および機械的特性に関する情報を生成する粉末および溶融金属の高度なモデル
4)粉末床*7、粉末肉盛り造形(DED)*8、ワイヤ供給*9プロセスに対応可能

(ご参考)
Institute of High Performance Computing について

シンガポールA*STAR(科学技術研究庁)において、1998年8月に設立された科学、産業、社会の主要な課題を解決するための計算モデリング、シミュレーション、AI(人工知能)の研究機関。

URL: https://www.a-star.edu.sg/ihpc

用語解説
*1
金属積層造形:製品の3次元形状デジタルデータを上下方向に多数の薄い層にスライス・分割、各層の形状データに従い金属材料を溶融・凝固して形状を形成、これを下層から上層に向かって順次実施し、各層を結合させながら積み上げて3次元形状を作り上げる方法。金属3次元プリンタとも呼ばれる。

*2
マルチスケール:数μm(1/1000 mm)の微小な金属粉末のスケールから、数10cmの部品のスケールにわたる幅広いスケール

*3
デジタルツイン:デジタル空間に現実空間の情報を複製すること

*4
マルチフィジックス:溶融・流動・凝固・伝熱・結晶成長・変形等の多様な物理現象

*5
コード:プログラム言語で記述されたソフトウェア実行のための文字列

*6
マルチスケール統合アーキテクチャ:マルチスケール(*2)を一括で取り扱うことを可能とするソフトウェア設計

*7
粉末床:金属粉末を敷き詰めた領域において、必要な部分のみを溶融・凝固して形状を造る方法

*8
粉末肉盛り造形(DED):金属粉末を吹き付けるとともにレーザー等で溶融・凝固させて形状を形成する方法(Direct Energy Deposition)

*9
ワイヤ供給:金属細線を溶融部に送り出しながら溶融・凝固させて形状を形成する方法

出典:
https://www.hitachi-metals.co.jp/press/pdf/2022/20221117jp.pdf

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