土工事の計画、施工、品質管理までを自動化し、生産性向上を確認
株式会社⼤林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、国土交通省発注の新丸山ダム建設工事(岐阜県加茂郡八百津町、可児郡御嵩町)において、施工計画から、施工、品質管理までを自動化する「統合施工管理システム」を適用し、システムの機能向上と適用範囲の拡大を進めています。
2023年12月に、本工事の土工事で、複数建機の自動・自律運転による盛土施工と計測ロボットを使った品質管理を行う実証施工に成功し、生産性向上を確認しました。
開発の背景
建設業界では就労人口の減少や2024年問題などに対して、DXによる生産性向上が喫緊の課題になっています。本工事では、国土交通省とともに、ダム建設現場における生産性や安全性の向上をめざし、自動・自律施工をはじめとしたさまざまな建設DXを活用した先進的な取り組みを行っています。
大林組ではロボティクスコンストラクション(※1)の実現に向け、福島県飯舘村における盛土工事で複数台の建機の自動・自律運転を実現する建機フリートマネジメントシステム(建機FMS)の実証(※2)などを行ってきました。建機FMSは、施工計画や品質管理のシステムとの連携により生産性向上が期待できることから、今回、建機FMSの機能向上に加え、それぞれのシステムを連携させ、施工計画から品質管理までを自動化する「統合施工管理システム」(※3)を開発し、本工事で実証施工しました。
本実証施工の内容
実証施工内容動画(動画再生時間:6分27秒)
今回の実証では、システム間の連携性の検証と、連携による各システム機能の生産性向上効果を確認しました。
1.システム間の連携性の検証
CMSで自動作成した施工計画と座標情報を、建機FMSに連携させて、建機への作業指示に活用し、自動・自律運転を行いました。施工後は、建機FMSで取得した施工完了した箇所の出来形、品質管理の情報をCMSに連携させることが可能で、施工結果の可視化や、翌日の施工計画への反映が容易になりました。
また、AtlasXで自動計測した盛土の品質管理データとともに、CMSで帳票作成した施工結果を、クラウド上の現場ダッシュボードで共有することで、関係者が遠隔でもリアルタイムに確認できました。
2.連携による生産性向上効果
本実証施工では、盛土する土砂を積み込むバックホウ2台、その土砂を運搬するダンプトラック6台、運ばれた土砂を敷きならすブルドーザ1台、土砂を締め固める振動ローラー1台の計10台による作業を行いました。一連の作業は現場内にある統合監視室において施工管理者1人が管理し、バックホウ、ダンプトラック、ブルドーザ、振動ローラー各1台の計4台の運転を無人化、その他の有人運転の建機も、建機FMSにより自動で作業指示や完了報告を行うことで、施工の自動化を実現しました。
本実証施工での盛土の施工量は1日当たり285m3を達成し、土木工事積算基準における同種の建機を使用した場合の日当り標準施工量260m3を上回り、生産性向上が確認できました。
施工計画や品質管理においては、施工管理者1人が20分程度の作業時間で、施工計画の自動作成ができ、帳票作成の自動化により、施工管理者の労働時間を1日当たり約13%削減しました。またAtlasXによる自動計測により品質管理データの作成にかかる人員を1人削減し、計測や施工結果を現場ダッシュボードで共有することで、工事関係者の現場・事務所間の移動回数を削減しました。
今回の実証施工の結果から、盛土量50万m3の施工で施工管理者の施工計画業務を試算したところ、約88%削減できることを確認しました。また、無人運転の建機・車両台数分のオペレーターの省人化が可能となるため、統合施工管理システムが汎用化すれば、大規模土工に適用することにより、生産性向上効果がより大きくなることを確認しました。
今後の展望
本工事では、今後、大林組と国土交通省は共同で骨材製造からコンクリート打設までの一連の工程を自動・自律化する「自律型コンクリート打設システム」を開発し、導入する計画です。同システムは「統合施工管理システム」の機能向上と現場環境に適合させた改良を行い、コンクリート打設を自動化することで、ダム堤体工事の自動化施工を実現することをめざしています。
大林組はロボティクスコンストラクションの実現に向け、建機の自動・自律運転を推進するとともに、複数の現場を遠隔拠点で一元的にサポートする体制を構築し、2030年までに年間10件程度の現場で実装することをめざしています。人とロボットの協働により、建設業の生産性向上、就労人口の減少による労働力不足などの課題を解決していきます。
新丸山ダム事業概要および、今後の建設業について
(動画再生時間:3分51秒)
※1 ロボティクスコンストラクション
動的CPS(Cyber Physical Systems)の技術により、現実空間とサイバー空間を結ぶことで建設プロセスをデジタル化し、作業の機械化と機械操作の遠隔化・自動化・自律化による省人化を図る構想。人を活かし、やりがいをつくり、人的にも環境的にも持続可能な建設プロセスの実現をめざす
※2 福島県飯舘村における盛土工事で複数台の建設機械の自動・自律運転と超遠隔操作を実証(2022年10月24日付)
※3 「統合施工管理システム」
「統合施工管理システム」は以下のシステムから構成される
(1) 施工計画を自動作成する建設マネジメントシステム(CMS:Construction Management System)
土工事における一連の作業である、積込・運搬・敷均・転圧の最適な施工計画を自動作成するシステム。設計図書データを取り込み、建機の台数や施工日数を設定すると最適な施工計画を自動作成し、その計画データを建機FMSに伝達する
(2) 建機の自動・自律運転を管理する建機FMS
複数台の建機を連動させ、CMSが作成した施工計画を基に、自動・自律運転を制御するシステム。新たな機能として、① 全自動施工、② 他社開発の自動建機との連携・管理、③ 有人建機と無人建機の連携・管理が追加され、全自動施工では作業ごとに必要な運転開始操作を不要にし、ボタン1つで全ての作業が開始し、作業完了まで1人の管理者で完結することが可能
(3) 盛土の品質管理を自動化するAtlasX™(アトラスエックス)
αシステム、自走式散乱型RIロボット、3Dレーザースキャナの3種類のIoT計測機器を用いて盛土の締固めの品質管理を自動で行うシステム。建機FMSで管理する建機にセンサーを取り付けるなどの簡易な準備で、盛土の品質データを自動取得し、クラウド上で処理・可視化を行う。また、本システムで処理されたデータはCMSに送信され、品質管理、出来形管理帳票の自動作成が可能
(4) 品質管理データ受発注者間で共有を行う現場ダッシュボード
クラウド上で閲覧できるさまざまなシステムを一画面に表⽰するシステムで、CMSによって作成された品質管理、出来形管理帳票のデータは、受注者のみならず発注者と容易に情報共有が可能
この件に関するお問い合わせ先
大林組 コーポレート・コミュニケーション室広報課
お問い合わせフォーム
プレスリリースに記載している情報は、発表時のものです。
出典:
https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20240411_2.html#
ご参考:
(株)光響が提供する製品・サービス情報:
・LiDAR(バックパック型・超高点群密度・ソリッドステート)
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