(レーザー関連)光学顕微鏡によるマルチカラー高速高精度1分子観察を実現

発表のポイント

  • 金、銀、合金ナノ粒子を高速・高位置決定精度で同時に観察する光学顕微鏡を開発した
  • 開発した光学顕微鏡を用いて複数の生体1分子の挙動を同時かつ高速に追跡可能にした
  • 複数種の生体分子や生体分子複合体が協調して働く仕組みの解明への貢献が期待される

概要
分子科学研究所の安藤潤助教、中村彰彦助教、山本真由子技術支援員、飯野亮太教授、生理学研究所のソンチホン特任助教、村田和義准教授の共同研究グループは、金、銀、金銀合金ナノ粒子を用いて、光学顕微鏡によるマルチカラー高速高精度生体1分子イメージングを実現しました。金ナノ粒子は、モータータンパク質や生体膜中の脂質等の1分子が動く様子を光学顕微鏡で観察する目印として用いられています。金ナノ粒子は光を強く散乱するため、マイクロ秒の時間分解能とナノメートルの位置決定精度で1分子の挙動を追跡できますが、複数種の生体分子を識別してその挙動を同時に観察することはできませんでした。本研究では、金、銀、金銀合金ナノ粒子の散乱光を識別して捉えるマルチカラー全反射暗視野顕微鏡を構築し、100マイクロ秒の時間分解能と2ナノメートルの位置決定精度を達成しました。さらに、開発した装置を用いて、脂質膜中を拡散運動する脂質分子や、微小管上を歩行するキネシンの挙動をマルチカラーで高速・高精度に捉えることに成功しました。本成果により、モータータンパク質が働く仕組みの解明等、生物学分野への様々な貢献が期待されます。

本研究は、科学研究費補助金新学術領域研究「発動分子科学」等の助成の一環として行われ、米国化学会の学会誌『ACS Photonics』に2019年10月17日付でオンライン掲載されました。

研究の背景
光学顕微鏡は、生体機能の発現に重要なタンパク質や脂質等の生体分子の動きを、生きたままの状態で捉えることができます。近年、光学顕微鏡で生体1分子の挙動を捉える目印(プローブ)として、金ナノ粒子が用いられ始めています。金ナノ粒子は、緑色の光と共鳴し、光を強く散乱します。従来からよく利用されている蛍光プローブと比較して、極めて高い信号強度が得られます。金ナノ粒子をプローブに用いてこれまでに、マイクロ秒(100万分の1秒)オーダーという高い時間分解能で、モータータンパク質や脂質分子の挙動が捉えられています。しかしながら、金ナノ粒子を用いた観察は単色に限られ、複数種の生体分子を同時に識別しながら多色で観察することは困難でした。

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