⼀般に結晶やガラスなどの凝縮した物質は電磁波を吸収しますが、その際、電磁波の周波数に応じ、テラヘルツ帯を境として、低周波数側では⾳波の性質、⾼周波数側では光学的な性質を持つようになります。ガラス形成物質では、その境界において、格⼦振動(結晶中の原⼦の振動)に起因する、ボゾンピークと呼ばれる普遍的な集団原⼦振動が現れます。しかしながら、物質の光学特性を評価するための、従来の基礎的な誘電関数では、この特異なダイナミクスを説明することはできませんでした。今回、本研究グループは、光(電磁波)と格⼦振動が相互作⽤した場合に形成される、フォノン-ポラリトンという準粒⼦の概念を⽤いて、ボゾンピークによるガラス特有の光吸収を表すことができる新しい誘電関数を提案しました。この提案では、ボゾンピークよりも低い周波数側では光の減衰が少なく、⾼い周波数側では散逸が⼤きいという事実に基づき、従来の誘電関数では説明できなかった、減衰の周波数依存性の表現を可能とし、⼀つの関数でボゾンピークの出現も表すことができます。この新しい誘電関数により、これまで困難だった、ガラスのテラヘルツ帯吸収スペクトルの定量的理解・解析を進めることが可能になります。さらに、この関数は、光が不規則的な格⼦振動中の伝搬を記述する理論的枠組みを応⽤しており、ガラスの格⼦振動のみならず、磁性など他の性質に起因する新しいボゾンピークの発⾒や、その理解に必要な基礎知⾒の構築にもつながることが期待されます。
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