車を走らせる時はガソリンを使う。飛行機を飛ばす時はジェット燃料(ガソリンの機体もある)、ロケットなら液体・固体燃料を、と何かを動かすときにはそれぞれ燃料がいるわけだが、それを、レーザーでやってしまおう、という試みが盛んになっている。
図1
所謂、レーザー推進技術だ。レーザー光で物体を超高温に加熱し、爆発させて推進力を得ようという技術だが、その方法は大ざっぱに4つに分類される。
・RPレーザー推進:連続発振型(Continuous Wave)
・RPレーザー推進パルス発振型(Repetitively Pulse)
・水膜方式:レーザー推進の対象となる物体を水で濡らしておき、水蒸気爆発を起こして推進力を増大させる。
・光圧方式:ソーラーセル(太陽帆)にレーザーを照射してその圧力で推進する。
NASAの行った実験によると、65gの円盤の下にレーザーを照射して空気を30,000℃まで加熱,・膨張させその圧力で70mまで円盤を上昇させることに成功したという。とは言え、この方法は強力なレーザーを使う必要があり、そのコストは相当なものになる上に、推進効率も良いとは言えない。この結果を受けて、東京工業大学・矢部孝教授が推奨しているのが、水蒸気爆発を利用して推進力を大幅にアップさせる水膜方式だ。空気の爆発+後方に水の壁を作ることで、壁を蹴って勢いをつけるような要領で推進力を増大させる。水は100℃(373K)で沸騰して水蒸気になる。これは18mℓの水が1気圧の環境では30ℓ、1,000倍強に膨張する、ということだ。つまり、レーザーを照射する箇所に水を垂らしておくだけでNASAの実験の1,000倍の爆発的な推進力を得られることになる。これを利用すれば、航空機を飛ばすこともできる。例えば、主翼の上に集光の為のガラスとファイバーを、下側には小さな穴を開けた水のタンクを装着する。この場合、機体はハリアーシリーズやF35Bのように垂直に離陸し、一気に高度は成層圏まで到達が可能だ。ここからは大体マッハ15程度で飛行する。東京-N.Y感が1時間半。ちょっと長めの通勤時間感覚で行けてしまうことになる。あくまでも構想段階だが、実現すれば、燃料は水だけ。太陽光と水で飛行でき、二酸化炭素も出なければ他の有害物質が出ることも無い、植物並みに環境に優しい上、ジェット燃料のように高額のコストも不要。そして超高速、となれば、まさに夢の乗り物、夢の移動手段の完成、と言えるだろう。
矢部教授は他にも遠隔操作の必要なロボットの動力源としての構想も打ち出していて、電子回路を使わないノンエレクトロニクスロボットであれば、放射線濃度の高い原子炉内等でも誤作動を起こすことなく調査・作業が行えるのではないか、としている。
遠隔操作で離れた場所からファイバーでレーザーを送り、ピストンやローターを組み合わせて動かし、レーザー照射でロボットを制御する方法が考案されている。こちらも、まだ構想段階だが、実現が可能ならば現在日本が抱えている問題や、これから先各国で必ず必要となってくる原発の廃炉作業に大きな影響を与えることは間違いない。最も実現に近そうなのは、レーザー推進ロケットかもしれない。当ニュースでも以前に取り上げたことのある「ブレイクスル―スターショット計画」で使用されるのは、ソーラーセルにレーザー光を受けて航行する超小型ロケットだ。その速度は光速の20%、太陽まで1時間、冥王星ですら3日で着けるスピードだ。
図2
この計画で打ち上げられるのはクレジットカードサイズとも切手サイズとも言われているが、この極小のロケットが成功し、段階を踏んで有人ロケットの打ち上げが可能になれば宇宙探索への貢献は計り知れないものになるだろう。薪、木炭、石炭、石油・天然ガス。人間はその歴史の中でエネルギーとなる様々なものを見つけ、利用してきた。新しいものを手に入れるたび技術は進み発展を遂げてきたと言っても良いかもしれない。石炭から石油へと時代が移り、現在に至ったように、石油からレーザーの時代へと進んでいく可能性も大いにあるのだ。今はまだ構想段階だが、これから技術の発展を目の当たりに出来る絶好のチャンスとも言えるだろう。
参考
*特定非営利活動法人 国際留学生協会
http://www.ifsa.jp/index.php?kiji-rayzersuisin0410.htm
*日本機械学会誌
https://www.jsme.or.jp/publish/kaisi/040502t.pdf
*Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%B6%E3%83%BC%E6%8E%A8%E9%80%B2
この計画で打ち上げられるのはクレジットカードサイズとも切手サイズとも言われているが、この極小のロケットが成功し、段階を踏んで有人ロケットの打ち上げが可能になれば宇宙探索への貢献は計り知れないものになるだろう。
薪、木炭、石炭、石油・天然ガス。人間はその歴史の中でエネルギーとなる様々なものを見つけ、利用してきた。新しいものを手に入れるたび技術は進み発展を遂げてきたと言っても良いかもしれない。石炭から石油へと時代が移り、現在に至ったように、石油からレーザーの時代へと進んでいく可能性も大いにあるのだ。今はまだ構想段階だが、これから技術の発展を目の当たりに出来る絶好のチャンスとも言えるだろう。
参考
*特定非営利活動法人 国際留学生協会
http://www.ifsa.jp/index.php?kiji-rayzersuisin0410.htm
*日本機械学会誌
https://www.jsme.or.jp/publish/kaisi/040502t.pdf
*Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%B6%E3%83%BC%E6%8E%A8%E9%80%B2
東京工科大学
http://blog.me.eng.teu.ac.jp/blog/images/2014/12/04/02.png(図1)
*Gigazine
http://i.gzn.jp/img/2016/08/25/how-dangerous-breakthrough-starshot/00.jpg
(図2)
「執筆者:株式会社光響 緒方」