2022年10月14日
報道関係者各位
国立大学法人筑波大学
東京都公立大学法人 東京都立大学
スマートフォンやインターネットなどの情報技術により、私たちの生活は飛躍的に便利になりました。その背景には、集積回路などの半導体工学技術やオプトエレクトロニクス(光電子工学)技術の発展があります。半導体素子を微細化することで高性能化が進んできましたが、従来技術では微細化が難しくなるなど、さらなる進展のための課題も見え始めています。
これを打ち破るため、次世代材料として注目されているのが、遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)半導体材料です。1層の厚みが原子3個分ほどしかない極限的薄さのシート状物質で、光を吸収すると正の電荷(正孔)と負の電荷(電子)が結合した「励起子」と呼ばれる粒子が生成されます。その大きさは3ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)程度しかありません。半導体素子の光応答を決定づけるのはこの励起子であり、その動きを制御することで新たな技術応用の世界が開けます。このため、励起子の動きを1ナノメートルの精度で捉えることが求められています。しかし、これまでの手法では数十ナノメートルの精度が限界でした。
本研究では、TMDC半導体の一種である WS2(二硫化タングステン)や WSe2(2セレン化タングステン)の励起子の動き(ダイナミクス)を1ナノメートルスケールの精度で可視化することに世界で初めて成功しました。複数の探針を用いて試料の電気特性を調べるマルチプローブ法、ナノメートルの空間分解能を持つ走査トンネル顕微鏡法(STM)、そして100フェムト秒(10兆分の1秒)の時間分解能を持つレーザー技術を組み合わせた成果です。
本手法の実現により、光電変換デバイスの効率改善や、ナノメートルスケールで励起子を駆動する省電力情報デバイスの開発に大きく貢献することが期待されます。
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