(レーザー関連)東京大学他/高性能レーザー計測で捉えた放電発生初期の超高速現象

-雷現象から医療・農業応用にまで供する実験ベンチマークを提示-

1 ポイント

  • 高性能なレーザー計測技術により、放電発生初期の超高速現象(ストリーマ放電※1)を支配する主要パラメーター群をセットで直接計測することに成功。
  • これにより、従来モデルでは予測されていなかった内部の電荷・電界構造を発見。
  • 従来モデルの妥当性検証・改良・精緻化に供する実験ベンチマークを初めて提示。
  • 放電の予測・制御性能向上により、雷現象の理解や放電の医療・農業・環境・エネルギー応用が加速するものと期待される。

左上:
2 波長 Talbot 干渉計(Dichroic Talbot Interferometers)では、2 種類の波長(785nmと 405nm、nm=ナノメートル、ナノは 10 億分の 1)のレーザーを用いる。ストリーマ放電(Streamer Discharge)の屈折率分布を 2 波長のレーザーと光学素子(Pinhole Array)で観測する。

右上:
1 次放電(Primary)と 2 次放電(Secondary)の間で電界が電離臨界値を超えたためにイオン化(Ionization)が起き、電子密度(Electron Density)の値が増加している(赤線で囲んだ部分)ことがわかる。

左下:
電界誘起第 2 高調波発生法(E-FISH Sensor)では、波長が 1030nm のフェムト秒レーザー(Femtosecond Laser)を用いる。ストリーマ放電(Streamer Discharge)内部の電界によって波長が 515nm の第 2 高調波発生(Second-Harmonic Generation)が生じる。

右下:
電界ベクトルの 1 次元分布を測定し、値(単位は Td、読み方はタウンゼント)を疑似カラーで表示。

2 概要
本研究では、高時間分解能を有する複数のレーザー計測技術を駆使することで、幅広い領域で研究が進められているストリーマ放電においてそのダイナミクスを支配する電子密度と電界を世界で初めてセットで直接計測することに成功しました。実験には再現性の高い単一フィラメント状の放電を用い、2次元電子密度分布と 1 次元電界分布を取得し、相互に整合することを実証しました。さらに、これらの実験結果は従来の理論・数値計算モデルでは予測されていなかった新しい電荷・電界構造であることを明らかにし、既存モデルの妥当性検証・改良・精緻化に資する実験的ベンチマークを提示しました。

本研究は埼玉大学大学院理工学研究科 稲田優貴准教授、塩田達俊准教授、中村亮介特任准教授、前山光明名誉教授、東京大学大学院新領域創成科学研究科 小野亮教授、東京大学大学院工学系研究科 熊田亜紀子教授らの共同研究によって実施され、2025 年 12 月 8 日に『Physical Review Letters』へ掲載されました。

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