人間の目に見える光は限られている。下は大体360nmから上は830nmくらいまで。色にすると波長の短い順に、紫、青紫、青、青緑、緑、黄緑、黄、橙、赤、所謂、可視光線、「虹の七色」だ。この外側にある波長の光が紫外線、赤外線で当然のように、人間の目には認識されない、というのが常識だとされている。人間以外の生物では、一部のヘビ(マムシ、ニシキヘビ、ハブの仲間)は赤外線を、昆虫(蝶や蜂等)、鳥類は紫外線を認識することが出来ると言われているが、人間はそうではない。
図1
しかし、実は特定の条件下では人間の目はこの外側の光を認識することができるのだ。
アメリカ・ワシントン大学医学部の研究チームによると、赤外線レーザーを使用する科学者たちが、時折、緑色の閃光を感じることがある、という報告を受け調査に乗り出したとのこと。
これを解明する為に、強力な赤外線レーザーの照射時に光子の数を揃え、照射時間を変更しながら実験を行ったところ、照射時間が短い程、赤外線レーザーを「閃光」として感じる割合が高くなっていることが分かった。
これは、網膜内の光を認識する細胞が、レーザー光の早いパルスの為に赤外線のエネルギーを二重に受取っていることが原因となっているという。
人間の目は、光子を網膜に吸収し感光色素という分子を作り出すことで、光を視覚に変換しているが、この時吸収する光子は感光色素1つあたり1つ、というのが通常だ。しかし、早いパルスのレーザー光の場合は、短いパルスの間に大量の光子を含んでいる為、1つの感光色素に2つの光子が吸収されてしまうことがある。2つ分のエネルギーであれば色素を活性化させるのに十分な大きさとなるので、普通の状態では人間が認識できないはずの赤外線を、光として捉えることができるのだ。
研究を主導したウラジミール・ケファロフ氏によると、可視光は400~720nmの光波を含んでおり、1,000nmの2つの光子ならば500nmの光子と同程度のエネルギーである為、人間が認識するのに十分な範囲にある、ということだ。
研究チームはこの結果を応用して、赤外レーザーを照射して網膜の一部を刺激して、目の機能や構造を確認する新型検眼鏡の開発を進めているという。
参考
*http://eye-media.jp/(図1)
*Mail Online
http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-2856835/We-supervision-human-eye-invisible-infrared-light-researchers-find.html(図2)
*カラパイア
http://karapaia.com/archives/52179584.html
「執筆者:株式会社光響 緒方」