水中レーザー無線LANの海洋試験成功。海洋調査、防衛にも活用

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地球の約7割は海だ。しかし、人間が海について知っていることは極々僅かなことしかない。
水深200m以上を深海とした場合、全体の99%が深海に定義される。
水深1000mを深海としたとしても75%にも及ぶ。
そのほとんどを人間は把握していないと言えるだろう。水産資源や海洋天然資源の把握、地震・津波研究、海に囲まれた島国である日本にとっては軍事的にも海は重要な領域となっている。調査・探査は行われているが、水中での通信に減衰の激しい電波や光を使うことは容易ではない。その為長らく音波を通信手段としてきたが、一度に送信できる容量は決して大きいものではなかった。

この現実を新たな技術が打開しようとしている。
海洋研究開発機構(JAMSTEC)と島津製作所の共同開発により、高出力半導体レーザーによる水中無線LAN技術が現実のものになろうとしている。既に今年7月に駿河湾で深海無人探査機「かいこう」を使った海洋試験が行われ、上下に分離した「かいこう」の機体のランチャー部を推進700mに、ビークル部を同800mに設置し、双方の間での通信をテストした。

*深海無人探査機「かいこう」

*「かいこう」ランチャー部と「かいこう」ビークル部にそれぞれ水中光無線通信装置を搭載し、お互いに同時に光を送受信して双方向通信を行う。その間、海域基礎データ取得装置は常時データ計測を行い、最適な通信のための基礎データを収集する。(JAMSTEC)

結果、音波通信の約1000倍となる20Mbpsの通信に成功し、同時に、リモートデスクトップ接続にも成功した。これは通信の安定性を証明することになる。赤色レーザーと水中での減衰が少ない青色・緑色レーザーをレーザーダイオードから放射して点滅させることでデータを送信。受信側は高感度光電子増倍管をした。移動体に搭載しての100m以上の距離の無線LAN通信に成功したことは世界初の快挙だ。
更に、これが環境を整えられた実験用プールではなく、海流や混濁、浮遊物のある実際の海で行われた実験の結果である、という点も実用化に向けた今後の展開が大いに期待できる部分だ。

*海洋研究開発機構と島津製作所共同開発の水中光無線通信装置
海域基礎データ取得装置を接続可能な水中光無線通信装置のマスターユニットには、今回の試験では狭角および広角ビームの青色レーザーダイオード、光電子増倍管を搭載した。対向するスレーブユニットは,狭角ビームの緑色レーザーダイオード、光電子増倍管、アバランシェフォトダイオードを搭載した。(JAMSTEC)


*水中無線通信中の映像
ランチャーの監視カメラからビークルを見下ろす映像。真ん中下の強い光がビークルからの通信光(青)、左下から中央に伸びてビークルを照らしているのがランチャーからの通信光(緑)。(JAMSTEC)

この技術が実用化すれば、海底に設置された探査機器をデータ収集の為に何度も引き上げる必要は無くなり、リモートデスクトップ機能を使って接近させた無人機にデータを送信するだけで済む。そうなれば時間もコストも大幅な削減になることは間違いない。また、この水中無線LANを使用すれば、水中同士だけでなく、水中と水上、水中と空中間の直接通信も可能なり、潜航中の潜水艦が直接水上の艦艇や飛行中の航空機と緊密な連絡を取り合うことも可能となる。この水中無線LANの開発には防衛省による「安全保証技術研究推進制度」による研究費も支給されており、昨今穏やかとは言い難い日本近海の安全保障で大きな力になる、と期待が寄せられている。水中無線LAN自体はLEDを使用したものが既に販売されているが、通信速度に難があり10Mbps前後に止まっていた。今後は更に海洋実証試験を継続すると共に、200m距離での20Mbpsでの通信、ペットボトルサイズまでの小型化を目標に掲げ、改良を進めて行くという。

*水中光無線通信による100m超の20Mbps双方向通信に成功。(JAMSTEC)

参考
*産経ニュース
http://www.sankei.com/premium/news/171028/prm1710280014-n1.html

*国立研究開発法人海洋研究開発機構 JAMSTEC
http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20171002/
http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20171002/img/image003.jpg(図2)
http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20171002/img/image004.jpg(図4)
http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20171002/img/image001.jpg(図3)
http://www.uchinome.jp/event/otherevent/07kairei/kaikou01.jpg (Top画像)

参考:オプティニュース

「光水中Wi-Fi」で20Mbpsの水中データ通信に成功。通信距離は音響通信の1000倍相当

「執筆者:株式会社光響 緒方」