【パーキンソン病】レーザーポインターによる歩行支援

パーキンソン病の特長的な症状として「すくみ足」がある。踏み出そうとした足が前に出ずうまく歩けなくなり、場合によっては転倒のリスクもある。転倒による怪我、例えば骨折等が原因で著しくQOLが低下し、最悪の場合は寝たきりになる可能性もあるという厄介な症状だ。
転倒したくない→外出しない→気分が沈む→鬱病、という風に精神的にも悪影響を及ぼすこともあるので、この「すくみ足」症状改善の為に様々な方法が考案されてきた。目印があると「すくみ足」が起こりにくいという事実から、歩行訓練の際に横断歩道のようなゼブラゾーンの設置、目印となるポイントを示してくれるレーザーポインター付の杖といったものが提案されてきた。そして、以前にご紹介させて頂いたこともある、足を踏み出す時だけ照射してくれるレーザーポインターシューズは画期的な開発だった。しかし、非常に残念なことに開発国はオランダだ。今のところ日本国内での販売予定は無く、手に入れるのは困難だろう。

そこで、日本でパーキンソン病に悩む方の一人が実験を行い、市販のレーザーポインターで同様の効果があることを、身をもって証明されている動画がYoutubeにUPされている。

それが以下の動画だ。


*レーザー歩行支援

レーザーポインターを使った際の立ち上がりのスムーズさもさることながら、驚くべきは歩行中の歩幅の違いだ。レーザー無しの状態では、動きが小さくなるパーキンソン特有の症状が現れ、ゆっくりとした小さく小刻みな歩き方をしている。それが、レーザーポインターで足を踏み出す場所を指し示すだけで、広い歩幅で安定して歩行することができている。レーザーポインターの小さな光点が有るか無いか、ただそれだけの違いが歩行時の「すくみ足」の症状を大きく改善しているのだ。

上記したように、レーザーポインター付の靴や杖等の様々な歩行支援アイテムが開発されてはいるが、その普及率は決して高いものではない。高齢の罹患者が多く、そういう製品があるという情報が行きわたっていないという現実もあるのだろうが、実際に使用した結果、「自分には使い勝手が悪かった」と言う人もおられるのではないだろうか。この動画をUPされた方は試された結果、手に持った状態で使用することが一番安定する、とのことだった。杖が使いにくかった方は腰につけるタイプを、それがダメなら手に持ってみる等、色々な方法を試しつつ、最適なアイテムを探すことが重要なのかもしれない。その際には、介助者や医師の助けを借りて安全な環境を確保した上での実験をお願いしたい。これで怪我をしてしまっては元も子もないからだ。

パーキンソン病は今のところ完治させる方法が発見されておらず、難病にも指定されている病気だ。50歳以上での罹患率が高く60歳以上になると約100人に1人が罹患しており患者数は多い。過去には寝たきりになるしかない病とされていたが、最近は薬の開発によって治療時期が早ければ早いほど、高いQOLを保った状態で生活できる期間が長くなってきている。最近では、京都大学がiPS細胞を使った臨床試験を発表し、症状の改善或いは完治に大いに期待が寄せられている。
そうは言っても臨床試験の結果が一朝一夕に出るわけではない。それまでの間にQOLを低下させない為に、より快適な生活を送る為に、レーザーポインターの使用方法を模索してみるのも良いのではないだろうか。

参考
*NPO法人 オール・アバウト・サイエンス・ジャパン

パーキンソン病の患者さんの歩行を容易にするレーザーポインターの使い方

*難病情報センター
http://www.nanbyou.or.jp/entry/169

http://kompas.hosp.keio.ac.jp/file/000323_02.jpg (Top画像)

執筆者:株式会社光響  緒方