年に何度か必ずニュースで取り上げられる話題に、サルやクマ、イノシシ等の出没事件がある。時に微笑ましく時に恐ろしい話題だが、内実を突き詰めて行けばなかなかに大変なのである。
図1
平成26年度の野生害獣による農作物被害総額は191億円(前年比-8億円)にのぼり、被害面積は8100ha(前年比+2000ha)、被害量は540000tに及ぶ。更にこれを動物ごとに分けると、シカによる被害が65億円(前年比-10億円)、イノシシが55億円(前年比-0.1億円)、サルが13億円(前年比-800万円)等となっている。農業に従事する方々にとってはとても見過ごすことのできない現状である。
勿論、人間側もただ手を拱いているわけではなく、電気柵や防護ネット、トタンによる目隠し柵等様々な対策を講じているわけなのだが、この度、害獣被害第2位にランクインするイノシシ等への対抗策として、新たな設備が開発され注目を集めている。
図2
その名は『逃げまるくん』。
動物の目の高さあたりに照準を合わせて設置し、装置から強力なレーザー光を照射することで目を保護しようとする動物の習性を利用して、イノシシ等の害獣を追い払う。約50mの範囲を照射可能で、照射角は70~80度。直接照射口を覗き込まない限りは人間には無害な設計となっている。
付属のソーラーパネルでの充電が可能でリチウムイオンバッテリーに蓄電出来る為(曇りの日でも充電可能!更にまったく充電できない状態でも一週間は稼働!)、電源が確保できない場所での使用も問題なく、更に個々の使用状況の違いを考慮して家庭用電源を使えるバージョンもあり至れり尽くせりである。また、レーザー光自体も昼間は緑、夜間は赤と時間設定で動物の嫌がる色に切り替えられる機能も付いている。
既に青森、宮城、山形などでのモニター試験も実施しており、設置したその日からイノシシやハクビシンが出なくなった、と語る果樹園業者もおり、結果としては85%以上の農家が「効果があった」と報告している。
現在は、首振り機能を搭載し、レーザーの有効範囲を広げる等、新たな改良を進めるとともに、イノシシ以外に鳥類やクマに対しての実証実験を行い、装置の有効対象の拡大を図っていく方針だという。
「逃げまるくん」は今年度中の発売開始を予定しており、価格は45万円程になる予定だ。
なお、問い合わせは多数寄せられているとの事だが、その中には農家だけでなくゴルフ場やJAXAなど意外なところも含まれている。目的は芝生の保護や列車事故防止、歩行者の安全確保等、農業以外の分野でも非常に期待されているようである。
参考
*日刊工業新聞
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00383685
*産経新聞ニュース
http://www.sankei.com/premium/news/170111/prm1701110001-n1.html
*http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/a/102700045/ph_thumb.jpg?__scale=w:500,h:362&_sh=03804c0c70(図1)
*J-Net21中小企業支援サイト
http://j-net21.smrj.go.jp/well/vibrant/detail/2016110201.html(図2)
関連記事:
続報!! 対イノシシ用レーザー『逃げまるくん』、対クマ戦にも勝利!!
「執筆者:株式会社光響 緒方」