レーザーがHIV感染細胞に直接攻撃

HIVは比較的新しい感染症だ。1980年代にアメリカで確認されたのが最初となる。(但し、1950年代から「痩せ病」として同症状の症候群が中央アフリカ各地で報告されている)。日本では1985年に最初の感染者が確認されている。
それから30年余りが経過し、HIVは世界中に蔓延している。WHOの発表によると2015年度HIV感染者数は3,670万人、そのうち新規の感染者は210万人、死亡者数110万人となっている。日本国内では感染者数は25,000人(薬害による感染者を除く)、新規の感染者は1,000人、AIDS発症者数は400人となっている。
現段階で完治に至る治療法は存在せず、一度感染すると生涯服薬が必要となる病だが、抗ウィルス薬を服用している限りは発症しない。

 図1

しかし、この抗HIV薬にはデメリットも存在し、一つは強い副作用があること、もう一つは服薬してから多くのHIVウィルスが貯蔵されているリンパ節や肺、神経系に到達するまでに希釈されてしまう、ということだ。
抗HIV薬の多くは経口摂取だ。所謂飲み薬というのは簡単で効果的な接種方法ではあるが、消化器官を経由する過程で薬効が薄まることは避けられない。もし仮に薬を直接ウィルスの貯蔵部位に送り込むことが出来れば、効果的な治療が行えるようになる。
これに、一つの方法が示された。
細胞にレーザーで穴を開け直接薬を注入する、という方法だ。
HIVに感染した細胞を、薬を含む液体に浸し強力だが極小のパルスレーザーを照射する。細胞には当然穴が開き、その穴が修復されるまでのマイクロ秒レベルの瞬間に、薬が細胞内に取り込まれるのだ。

 図2
*HIV感染細胞にレーザーを照射し穴が開いた瞬間。

 図3
*穴は瞬時に修復され薬が取り込まれる。

未だ実験段階ではあるが、細胞にパルスレーザーを使って穴を開ける技術自体は確立されており、人体に対してこれをどう適応させるかということが課題となるわけだが、これに対しても発案者であるペイシェンス・ムタンジ氏は回答を示している。

 図4

上図右のような装置を用い、レーザーで感染部位を切開しカメラで探査、そしてスプリンクラ―状の装置で薬剤を散布し、レーザーで細胞に穴を開け薬剤を注入する、という方法だ。尤も現在は構想段階で早期の実現というわけにはいかない。
まだまだ先の話にはなるだろうが、この治療法が実現すれば服薬による強い副作用に苦しめられることなく、現状では不可能と言われているHIVの完治が夢ではなくなるかもしれない。

参考
*logmi
http://logmi.jp/91178

*http://i0.wp.com/img.logmi.jp/wp-content/uploads/2015/09/gazou0081.jpg(図1)

*http://i0.wp.com/img.logmi.jp/wp-content/uploads/2015/09/gazou0091.jpg(図2)

*http://i0.wp.com/img.logmi.jp/wp-content/uploads/2015/09/gazou010.jpg(図3)

*http://i0.wp.com/img.logmi.jp/wp-content/uploads/2015/09/gazou011.jpg(図4)

「執筆者:株式会社光響 緒方」