以前、この面白レーザーニュースで取り上げたことのある、百発百中の蚊撃墜装置「Photonic fence」が、いよいよ実用間近となっている。
Intellectual Ventures Lab(IVL)が2009年から開発を続けてきたこの製品の注目すべき性能は、複数の光学測定機器を搭載し、虫の羽ばたきの周波数やサイズ、形、対気速度を計測し、狙撃する対象かどうかを判断するところにある。それが蚊のように小さな害虫でも、その雌雄すら判断して狙撃する。正に一流のスナイパーだ。
元々は発展途上国での公衆衛生の向上や虫の媒介する伝染病予防を目的として開発されていたが、米国内において害虫ミカンキジラミの被害が深刻化したことで方針を転換することとなった。
このミカンキジラミという害虫は、柑橘類の果樹に取りつき、カンキツグリーニング病を引き起こす原因となっている。樹木が感染すると葉は黄色い斑になり変形、枝も変形し、果実は発育が悪く小さく皮の表面は熟しても緑の斑が残り、味は苦い。枝先端から枯れ始め最終的には枯死に至る、柑橘農家には天敵とも言えるのだが、何よりも問題となっているのは、感染樹の伐採しか有効な対抗手段が存在しない、ということだ。
2005年にフロリダで確認された後、2014年には大規模病害を引き起こしオレンジの収穫に大打撃を与え、過去15年間で70%もの収穫量が減少する事態となっていた。また、2002年には農業テロの危険性から農務省の選択病原菌リストにも掲載されている程の害虫だ。
図1
これを受けてIntellectual Ventures Lab(IVL)は、害虫被害に悲鳴を上げる農家向けの商業プロジェクトにシフトチェンジしたわけだが、現在、農務省で実地検査中の害虫用Photonic fenceは、対象検出距離100m、射程範囲・幅30m、高さ3m。更には毎秒20匹というハイペースで発見、識別、狙撃が可能で、たとえ害虫が大挙して襲来したとしても、99%排除できる性能だという。これを田畑や果樹園を網羅するように配備すれば、害虫には逃げ場のない包囲網の完成となる。
また、方針を変えたとはいえ、蚊対策としてのPhotonic fenceの活用も進められており、蚊帳や殺虫剤、治療薬と併用してマラリア対策に乗り出す構えだ。
人件費の削減、労働の軽減、農薬を使わない害虫駆除により食の安全性が向上、農薬費の削減等、利点の多いPhotonic fence。他にも昆虫の生態調査等の用途にも使えるとあって、農業従事者や医療関係者以外にも販売を心待ちにしている方々がいるようである。
Intellectual Ventures Lab(IVL)は農務省の検査が終わり次第、先ずは農家に向けて害虫対策用Photonic fenceの販売を開始するという。蚊対策にしろ、その他の害虫対策にしろ、日本での発売はいつになるのか、気になるところである。
参考
*Intellectual Ventures Lab
http://www.intellectualventureslab.com/
*CNET Japan
https://japan.cnet.com/article/35103398/
*engadget 日本版
http://japanese.engadget.com/2017/06/26/photonic-fence/
*ttp://o.aolcdn.com/hss/storage/midas/(図1)
「執筆者:株式会社光響 緒方」