金剛石、アルマース、ディアマンテ。様々な名前で呼ばれ世界中で愛されている輝石、ダイヤモンド。その品質の証明に重要な4つの「C」がある。
ダイヤモンドを購入すると、多くの場合『鑑定書』なるものが付いて来る。これは言うなればダイヤモンドの身分証明書のようなもので、その中の記載されている4つのCが、ダイヤモンドのグレードを証明する、「color:色」、「carat:重さ」、「cut:研磨」、「clarity:透明度」だ。
図1
鑑定書例(中央宝石研究所版)
図1の③④⑤⑥がそれだ。従来、ダイヤモンドの鑑定書はこのような物なのだが、近年、加工技術の発展により、新たな記述が見られるものが出てきている。
図2
*中央宝石研究所ソーティング画像
ソーティングとは、ルース(加工前の裸石)の状態の時の箱や袋に記載されているもので、鑑定機関の発行している簡易鑑定のことだ。
見て頂きたいのは、図2の左下側に書かれている、「LDH」の三文字。これは
「Laser Drill Hall」(レーザードリルホール)の略で、ダイヤモンド本体にレーザーによる穴が開いていることを示す記述だ。
何故、そんな穴が開いているのか、開ける必要があったのかというと、単純にダイヤモンドを美しくする為、それに尽きる。
ダイヤモンドは天然の鉱物だ。その為、高い確率で内部には傷や内包物(インクルージョン)を含んでいる。当然、それが少なければ少ないほど美しく、価値が高い。前述した4Cの中の「clarity:透明度」がこれだ。
図3
*clarity評価基準。左ほど希少価値が高い。
無色透明のダイヤモンドの中に、黒い内包物を含んでいる場合などは、いくらcolorが美しくともそのグレードは高いものにはならない。それが従来のダイヤモンドだったわけだが、そこに新技術が投入されているのだ。
内包物を含んだダイヤモンドに、レーザーで目に見えないレベルの微細な穴を開け、そこから酸などの漂白剤を注入することで内包物の黒を消す。内包物自体を消してしまえる分けではないが、見え難くすることでダイヤモンドの輝きを高める技術だ。この時に開けられた穴をレーザードリルホールと言い、宝石鑑定で良く使われる10倍ルーペで確認することが可能だ。
図4
*レーザードリルホール:ダイヤモンド上部から下に向かって線が入っている。
これにより、ダイヤモンドは輝きを増すわけだが、非常に残念なことに、宝石としての価値は高いものではない。
現在市場に出回っている宝石は、種類を問わず何かしら人の手による加工が成されているものが多くある。
熱を加えて発色を美しくさせる、割れやすい性質の宝石は樹脂やオイルに浸して防止する等のエンハンスメント。着色処理、高温高圧処理、放射線処理等を行うトリートメントの2種類に分類される。(カットや研磨はこれらに含まれない)。
エンハンスメントは通常の処理として問題視されないが、トリートメントは人工的に宝石の性質を変化させているとして、大きく価値を下げることがある。
レーザードリルホールの技術はトリートメントに含まれる為、未処理のダイヤモンドより20~50%程も価格が下がることになるのだ。
だからと言ってこれが悪い技術かと言えば、勿論そんなことはない。レーザードリルホールを施されたダイヤモンドは、一点止めのシンプルなデザイン等に使用されることが多い。
図5
このようなデザインは採光性が非常に高く、台に収められ採光を制限された物よりも、遥かにダイヤモンド本来の輝きを楽しむことが出来る。ある程度の大きさがある方が美しく見えるデザインでもある為、価格の下がっているレーザードリルホールのダイヤモンドは最適だ。
女性の永遠の憧れ、とも言われるダイヤモンド。本来は価値が低く商品としては扱うことが出来なかった筈の石を美しく見えるようになり、誰かの手に渡って喜ばれるなら、素晴らしい魅力的な技術、ということが出来るだろう。
参考
*Four-Cs
https://www.four-cs.com/diamond/dgrguide.htm (図1)
*TANO JEWELRY
https://www.j-tano.com/SHOP/40942.html (図2)
都内百貨店外商員が伝える4C DIAMOND
http://4c-diamond.link/category1/entry1.html(図3)
*愛つも恋つも宝石なやつ
http://d.hatena.ne.jp/images/diary/g/gemologist/2006-03-25.jpg (図4)
https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/carat/cabinet/pendant-grading/pdg2193s.jpg?_ex=320×320&s=2&r=1
https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/31OiTycqPNL._UY395_.jpg(図5)
*ダイヤモンドの情報サイト
https://brand-concier.com/dia-knowledge/
「執筆者:株式会社光響 緒方」