青色LED材料を活かして、熱を電気に変換

研究成果のポイント

  • 既存の実用熱電材料の2~6倍に相当する、効率的な熱電変換出力因子を達成。
  • 青色発光ダイオード材料(窒化ガリウム)の高い電子移動度を活かした半導体二次元電子ガスを利用。
  • 熱電材料を高性能化するための新しい材料設計指針を与えることが期待される。

研究成果の概要
北海道大学(総長:名和 豊春)、韓国・成均館大学校(学長:Chung Kyu SANG)、産業技術総合研究所(理事長:中鉢 良治)は、青色発光ダイオードの材料である窒化ガリウム(GaN)からなる半導体の電子の動き易さを活かした半導体二次元電子ガスが、既に実用化されている熱電変換材料に比べ2~6倍も大きな熱電変換出力因子を示すことを発見しました。二次元電子ガスとは、電子が溜まったナノメートル(nm)オーダーの極めて薄い層のことです。ここ数年、米国や中国で性能の高い熱電変換材料が報告されていますが、性能が再現できないなど、実用化にはまだ多くの課題があります。今回の発見は、温度差を電気に直接変換する熱電材料を高性能化するために有力な材料設計指針となると期待されます。将来、工場や火力発電所、自動車からの廃熱を電気に変えて有効利用する技術に繋がります。

研究成果の詳細
(背景)
金属や半導体のゼーベック効果によって温度差を直接電気に変換できる熱電変換は、工場や火力発電所、自動車などの廃熱を直接電気エネルギーに変換する、クリーンなエネルギー変換技術として注目されています。この熱電変換技術に利用できる半導体(=熱電変換材料)の熱⇔電気変換性能は、温度差1℃あたりに発生する電圧(熱電能注4)、S)、内部抵抗の逆数(導電率、σ)、熱の伝わりやすさ(熱伝導率、κ)、平均温度Tを用いて、次の式で決定されます。

熱電変換性能指数ZT = S2×σ×T/κ

つまり、温度差をつけやすく、電圧が大きく、電気が流れやすい材料が熱電変換材料として優れています。熱⇔電気変換効率は、この性能指数ZTと、熱電変換材料に与える温度差の大きさによって決まります。例えば、ZTが1の熱電変換材料に、700℃の温度差(自動車のエンジン付近の熱に相当)を与えた場合、熱⇔電気変換効率は約17%です。
現在、性能指数ZTが1をわずかに超えるいくつかの熱電変換材料が実用化されていますが、これらの材料は、資源が少ないことから高価であり、化学的・熱的な安定性が低いことと、それに伴う毒性などの問題点があり、大規模な実用化への障害となっています。特に、重金属元素の一つであるテルルを含むテルル化ビスマスは室温付近の温度で大きなZT(>1)を示しますが、テルルの希少性(プラチナよりも天然資源が乏しく高価)と毒性のため、こうした元素を使わない熱電変換材料の開発が世界中で活発に行われています。

近年、米国や中国の研究者が相次いで性能の高い熱電変換材料(ZT > 2)を発表し、多くの熱電変換材料の研究者が注目していますが、性能の再現性の問題を含めて、実用化にはまだ多くの課題があります。その主な理由として、これらの材料に使われるセラミックや焼結体(粉体を焼き固めた試料)には多くの粒界(粒と粒の境界)が存在し、粒の大きさや向きが不揃いであることから、試料ごとにZTが大きく異なることが挙げられます。ZTがばらついている試料は、実用化に向かないだけでなく、真に高性能な熱電材料を開発するための材料設計指針を立てるにも不向きです。

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