ポルシェクラシック、希少パーツを3Dレーザープリンターで製造へ。

世界の四輪車保有台数は2015年度で12億6,139万台。2016年度新車生産台数は9,497万7千台、前年比4.5%増で7年連続増加している。「どうせ車を買うならやっぱり新車がいい」という人は多いと思うが、皆が皆そういうわけではない。中にはビンテージ物、クラシックカーに多大な愛情を注いでいる、という人々も世界各地に一定数以上存在している。

そんなクラシックカー愛好家の悩みと言えば一番に出てくるのは、パーツの問題だ。希少な車の希少なパーツの中には、既に入手不可能とされる物もある。これは、愛好家たちにとっては死活問題だ。たった一つのパーツが見つからない、それだけで彼らの愛車は走ることが出来なくなってしまうわけだから、スペアパーツの入手は必須だ。しかし、生産台数の多い車ならまだしも、元々の生産台数が少ない車となると需要は少なく、メーカー側が対応しきれない、などの悲劇的状況も少なくはない。そこに、一流車メーカーが画期的対応策を打ち出してくれた。

2018年2月12日、ポルシェAGのクラッシックモデル専門部門、ポルシェクラシックは、スペアパーツの供給問題の解決策として、3Dプリンターによる希少パーツの製造を発表した。例えば、1986年から限定生産されたポルシェ959の生産販売台数は292台。そのクラッチのリリースレバーは現在入手不可能となっている。このねずみ鋳鉄製のパーツ製造の為に、ポルシェクラシックはレーザー溶融による3Dプリントを選択した。

コンピューター処理で、厚さ0.1mm以下の粉末工具鋼の層で処理プレートを覆い、不活性ガスの中で高エネルギーのライトビームを使用して、希望する場所で粉末を溶融。スチール層を作る。これを繰り返して層を積み重ね、必要なパーツの形に造形する。でき上がったパーツは、3t近い不可の圧力試験にも、内部欠陥を調べる断層撮影検査にも、テスト車両による実地・走行試験にもクリアし、品質と機能が十分であることが確認されている。同様の技術で、エアバスにジェットエンジンを提供しているCFMインターナショナルはエンジンのパーツを製造し、効率化とコストダウンに成功している。今後、希少部品の製造に3Dプリンターが活用される機会は増えていくのではないかと見られている。

3Dプリンターを使用しての製造であれば、需要が少なくともデータがありさえすれば無理なく供給出来る。メーカー側は、僅かしか売れないパーツの為に製造システムを維持する必要が無くなり、愛好家側はスペアパーツの心配をすることなく愛車に乗ることが出来る。両者共に嬉しい技術だ。
ポルシェクラシックでは現在は8つのパーツを3Dプリンターで製造しているが、更に同技術、又はSLSで製造可能なスチール、合金、樹脂素材のパーツ20種をプリンターでの製造が可能かどうかテストしているという。

最後に、このポルシェ959は現在購入しようとすると物によっては2億円を超えることもあるとかないとか。とは言え、2017年時点で最も高額なクラシックカーは「1963年型フェラーリ250GTO」で56億円、とのこと。クラシックカーはなかなかに剛毅な趣味なのだな、と驚くばかりだ。

参考
*PORSCHE
https://www.porsche.com/japan/jp/aboutporsche/pressreleases/pj/?pool=japan&id=2018-02-13&lang=jp

*Response
https://response.jp/article/2018/02/14/306051.html

*MOBY
http://car-moby.jp/media?id=167555&post=30691&num=7

*JAMA 日本自動車工業会
http://www.jama.or.jp/world/world/index.html

*GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20180214-porsche-3d-printing/
https://i.gzn.jp/img/2018/02/14/porsche-3d-printing/002_m.jpg (画像2)
https://i.gzn.jp/img/2018/02/14/porsche-3d-printing/001_m.jpg (画像3)

https://www.autocar.jp/wp-content/themes/base/timthumb.php?src=https://www.autocar.jp/wp-content/uploads/2017/03/959_0318_001.jpg&h=440&w=660&zc=1 (画像1)
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執筆者:株式会社光響 緒方