〈空想世界レーザー〉人類が「目からレーザー」を撃つ方法

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レーザーは便利だ。あらゆる分野で研究・開発され活用されているわけだが、これは現実世界だけに留まらない。空想科学の分野では、正に異次元の飛躍を遂げていると言っても過言ではない。

人が乗って操縦する某巨大ロボットはレーザー(のような)サーベルを振り回し、地球を救うために飛び立った宇宙戦艦はレーザー砲をぶっ放す。宇宙空間で戦闘行為が繰り広げられればレーザー兵器は大活躍し、驚くべきことに放たれたレーザーは直線ではなく弧を描いて敵機を撃破することも少なくない。なんと恐るべきホーミング機能か。しかも、その速度は回避可能なスピードであるばかりか、レーザー光が肉眼で余裕で見えている。何故見えない波長にしないのか、という疑問は胸の奥深くに仕舞い込まなければならない。拳銃サイズのレーザー銃は最もポピュラーで、コンビニで売っているのか、というレベルの頻回さで登場する上に、何故か生身の人間が肉眼で見切ることさえあり、剣の形に凝縮されたレーザーをその高温をものともせずに人が握って振り回していたりする。レーザーを張り巡らせたトラップは触れたら警報を鳴らすどころか侵入者を細切れにし、鋼鉄のヒーロースーツを着込めば掌からレーザーを放って敵を一掃することも余裕だ。

しかし、空想世界で最も驚くべきは、そのビックリ技術ではなく生身の生物だ。目や口からレーザーを撃ってくる生身のなんと多いことか。日曜朝の女の子たちのヒロインは某シリーズで、竜の玉を七個集める有名漫画でも緑色の宇宙人が、有名RPGシリーズのとある作品では金髪美人の先生が、それぞれ目からレーザーをぶっ放している。映画界でも、ミュータント映画シリーズで目から超強力レーザーを照射する青年が登場するし、日本に上陸して幾度となく破壊行為を繰り返している怪獣は、口どころか背中の鰭(?)部分から全方位対空レーザーを照射してくれる。戦闘機をも簡単に撃墜する威力が恐ろしい。地球を侵略/破壊する目的で襲来する怪獣・怪人・宇宙人に至っては、これができたら地球を攻撃!と決まっているかのように標準装備している。彼らにとって、レーザーを生身でぶっ放すことは、義務教育で習うレベルの必須事項なのか、と思える程だ。

転じて、我々はどうか。勿論、義務教育でレーザーの吐き方など習わないし、そんな授業が義務化されても真剣に困る。全員が落第、留年間違いなしだ。そもそも努力しても目からも手からも口からもレーザーが出るとは思えない。普通でも普通でなくても出ないものは出ない。なんともか弱い生命体だ。とは言え、こうもポンポン生身でレーザーを撃たれると、人間にも撃てる方法は無いものか、と考えてしまうことは自衛の為にも当然と言えば当然ではないだろうか。方法としては、日曜朝の仮面系ヒーローよろしく人体改造か、それとも、遺伝子組み換え食品のように遺伝子ごといじくってレーザー人間を新たに誕生させるのはどうだろう。両者ともに世間様にばれた時点で人権や倫理の問題で目も当てられない騒ぎになることは間違いない。ついでに、遺伝子の何をどう弄りまわして改造して、人間の遺伝子と何を掛け合わせたら目からレーザーが出せるのか、皆目見当がつかないので、却下だ。蛍やホタルイカ系と掛け合わせたら発光現象位は起こせるかもしれないが、儚い美しさと破壊力溢れるレーザー攻撃では全くもって逆方向なので意味がない。ただ光れば良い、というものではないのだ。寧ろ、レーザーを撃つ蛍やホタルイカを目指した方が早いし倫理的にも問題が無いのではないだろうか。しかし、これを生み出してしまったら人類存亡の危機を迎える気がするので、こちらも却下しておく。

ここは、生身の人間そのままではなく、何らかの科学技術の力に頼ることまで妥協してみれば何とかならないだろうか。人体に極小サイズの機械を装着するか埋め込むかすれば、自力で、とはいかなくとも目からレーザー、口からレーザーを実現することは可能になるかもしれない。

弊社所属の専門家、現実科学/空想科学双方に通じるK氏に意見を聞いたところ、アイデアを語ってくれた。やはり、当然のことながら生身のままでは無理とのことなので、小型の装置を装着することから考えてみる。まず、「目からレーザー」に限定して考えて見る。形状は親指と人差し指で輪を作った程度の大きさのリング状、長さの無い望遠鏡のような形にし、使用時にはそれを目に当ててレーザーを照射するか、若しくは眼鏡型で常時隙なく身に着けていられるようにする。形状がこのタイプの場合、照準とトリガーをどうするかが問題となってくるが、これには視線追跡技術を応用する。視線で索敵&照準→瞬きでトリガー、というシステムなら、敵発見後速やかに攻撃に移れる。

次の課題は威力だ。攻撃用なのだから、それ相応の破壊力は欲しいところだ。と言って初っ端から戦闘機や巨大宇宙怪獣を撃破したい、というのはあまりにも身の程知らずが過ぎる。ここは、対一般車両程度で、と言いたいがK氏のご意見により初心者らしく対人/対生身を対象として考えて見る。対人である場合は、何もレーザーで傷を負わせなくても目潰しとして使えば、と安易に考えるのは危険だ。目潰し用レーザー兵器 (BLW: Blinding Laser Weapon)は、特定通常兵器使用禁止制限条約 (CCW)によって、既に規制され使用は禁じられている。ダムダム弾や対人地雷、クラスター爆弾と同じ扱いだ。禁断兵器として国際社会から糾弾されることを避ける為にも、ここは正々堂々とレーザーによる攻撃を目指さなくてはならない。

軍が開発を進めているレーザー兵器で、現在輸送揚陸艦ポンセ(USS Ponce)で試験中のものが30kw、AC-130Jのレーザーガンシップ化に使われているのが120kw程度とされている。このレベルの電源となるとそのサイズは小さな部屋一つ分かコンテナくらいにはなるのではないだろうか。発電施設と言っても過言では無い。この規模の物を常時そばに置くには、大型トラックかトレーラーの免許を取得してその運転席からレーザーを撃つ、という方法位しか見当たらないが、これでは趣旨が変わってしまう。トラックにレーザー兵器そのものを積み込む方がどう考えても便利だろう。あくまでも標的は生身だ。少し威力を落として人力で持ち運べるサイズ電源を使用することにしよう。K氏によると、某人が乗れる巨大ロボットも背中に「ランドセル」という正式名称の電源パックを背負っている、とのことなので、それに習ってリュック型を採用する。ディーゼルやガソリン式では不測の事態が起こった時に大惨事になるので、電池式が良いのではないか、とのこと。通常の火薬を使用した銃器と同様に弾切れが起こることになるが、そこは譲歩する。まだ「生身でレーザー」の超初心者である人類が、無制限にレーザーを撃つのは早すぎる、ということにしておく。

更に、通常のレーザー兵器であれば目に見えない、というのも大きな利点の一つではあるが、今回はあくまでも空想科学のようなレーザーの実現、ということなので可視光の方が望ましいわけだが、弊社所属の専門家の一人、N氏によると、最も強力なのは紫外線レーザーとのこと。しかし強力ではあるが散乱しやすく長距離の攻撃には不向きでもある。逆に遠距離に適正があるのは赤外線だが、こちらはどちらかと言えばじっくり焼き上げる効果が強い。時間をかけて照射し、ジワジワと仕留める感じだ。焼肉相手なら垂涎の方法だが、対人で考えると残酷感が否めない。中世の魔女の火炙りを想像してしまう。せっかく光速のレーザーを使うのだから、ここは不可視光だが素早く仕留められる紫外線レーザーを使って比較的近距離で戦闘を行うべきだろう。

現実世界のレーザーは空想世界のように「当たれば即爆発炎上」という効果は無い。直撃したからと言って、宇宙戦艦が轟沈するような光景は二次的な被害で誘発されない限りは、普通見られない。従って、一発必中を狙わらなければならない。前述したように、索敵/照準とトリガーは視線と瞬きで行う。正に見敵必殺、Search & Destroyだ。人体の急所はいくつかあるが、ここは頭蓋骨に覆われた頭部や衣服に覆われていることが多い心臓ではなく、むき出しになっている割合が高い咽喉を狙うことにする。通常の狙撃では範囲が狭く難易度が高いが、視線で照準を合わせ、直線で進むレーザーを使うのだから、ハードルは高くない。「見て」、「撃つ」だけだ。しかし、ここで注意しなくてはならないのは、誤射だ。トリガーは瞬きだ。うっかりあらぬ方向を向いてパチパチしてしまったり、クシャミでもしようものなら大惨事を引き起こすことは間違いない。花粉症の人間が春先に使用すれば危険すぎる無差別攻撃兵器と化してしまう。

何らかの安全装置か強力な鼻炎薬、相当な訓練が必須となるだろう。結論として。リング状、又は眼鏡型の照射装置に、ランドセル型の電源パックを背負い、強力な鼻炎薬を常備して、瞬きの制御とクシャミを回避する特殊訓練を受ければ、「目からレーザー」は実現する、かもしれない可能性がほんのちょっとだけある、かもしれない。現実問題として、技術的にも諸々不可能事があるだろうし、殺傷能力があるようなレーザーは販売が法的に規制されていたりもするので、そもそも実現自体が不可能なわけだが、たまには、こんなこと出来たら面白いだろうな、ということに頭脳と想像力を駆使して見るのも楽しい。科学技術の多くは、人間の想像力と少しの遊び心で発達してきたのだから。

最後に、「目からレーザー」をぶっ放す自分の顔が見てみたい、という方は各種合成アプリが存在するので、お試し頂くのも楽しいかもしれない・

参考
http://www.rezapointa.com/images/rezapointahtpowlaswelm2.jpg (Top画像)

執筆者:株式会社光響  緒方