健康診断は結構時間がかかるものだ。体温計で体温を計って、血圧計で血圧を、心電図で心臓の状態や心拍を、血液検査が必要なら注射器で採血までされなければならない。病院で健康診断、となると一日がかりとなるのが普通だ。この長時間拘束のおかげで面倒くさくて診断を受けずに放っておいてしまう人は少なからずいるのではないだろうか。もしこれが一瞬で、しかも服を脱ぐ必要すらなく終えることが出来たら、どれだけ楽なことか。健康診断を受ける人の数も一気に増えるかもしれない。
という夢の研究がイスラエルで進められている。研究しているのは、イスラエル・テルアビブに拠点を置く「ContinUse Biometrics」という会社。
開発担当者達によると、呼吸状態、肺機能、心拍、体温、血圧、脈波伝播速度、ブドウ糖、アルコールレベルを、レーザーを照射するだけで調べられるというのだ。ベースとなっているのはナノテクノロジーで、体内の化学物質や分子、内蔵の動きによる振動を、特殊な光学レンズとレーザーを搭載したカメラやセンサーで計測するシステムだという。
驚くべきことに、このシステムは服を着たまま、しかも1m離れたところからも計測が可能であることだ。健康診断とは言え、人前で服を脱ぐことに抵抗のある人や、宗教上の理由で脱ぐことが躊躇われる人、QOLの低下により衣服の着脱に時間や労力を必要とする人等にとっては正に朗報だ。自宅や病院でモニタリングが必要な患者に向けた技術として開発中、ということで、一般向けの健康診断に利用されるかどうかは今のところ不明だが、導入を期待してしまう技術だ。また、このシステムをスマートフォンに入れてリモートモニターとして使用することも視野に入れて開発を進めているとのことで、在宅医療の場合でも患者の状態を随時的確に把握できる環境作りに役立つのではないかと見られている。
まだ開発段階の為、実用化の時期は未定だが、導入されれば経過観察の為に入院の必要があった患者を自宅療養に切り替えることが出来る等、医療の現場での大きな力になってくれることは間違いないだろう。また、体内のアルコールレベルも照射するだけで計測できる、ということは、同様の技術が飲酒検問に使われたりする日も来たりするのだろうか。となると、世の飲酒運転撲滅にも一役買ってくれたりするのかもしれない。
*ContinUse Biometrics
https://www.cu-bx.com/
*TECH ABLE
https://techable.jp/archives/77135
https://techable.jp/wp-content/uploads/2018/05/fullsizeoutput_4757-300×225.jpeg (Top画像)
https://techable.jp/wp-content/uploads/2018/05/fullsizeoutput_4759-300×225.jpeg (図1)
執筆者:株式会社光響 緒方