発表のポイント
・レーザーコーティング加工ではコーティング粉末の供給量やレーザー光の出力の適切化が課題であり、経験または従来のシミュレーションコードから算出することは時間・費用の観点から困難である。
・原子力機構は、レーザーコーティング加工時に生じる固体金属の溶融・凝固過程に対して、汎用エンジニアリングワークステーションでも利用可能な計算科学シミュレーションコードSPLICEを世界に先駆けて開発した。
・SPLICEを活用することで、コーティング膜厚、溶込み深さなどの要求仕様を満足するレーザー照射条件などの施工前評価が実測では数ヶ月要していたのに対して数週間に短縮した。
・レーザーコーティング装置に組み込むことで装置の市場拡大が期待される。
・本成果での条件事前評価に係る考え方の一部は、平成30年度より開始する予定のレーザー溶断に係る研究開発「ふくいスマートデコミッショニング技術実証拠点」事業でも活用する計画である。
概要
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄)高速炉・新型炉研究開発部門 敦賀総合研究開発センター レーザー・革新技術共同研究所の村松壽晴GL、原子力科学研究部門 物質科学研究センター 放射光エネルギー材料研究ディビジョンの菖蒲敬久研究主幹と国立大学法人大阪大学(総長 西尾章治郎)接合科学研究所の塚本雅裕教授らの研究グループは、レーザーコーティング加工時に生じる固体金属の溶融・凝固過程を汎用エンジニアリングワークステーションにより評価可能な計算科学シミュレーションコードSPLICEを世界に先駆けて開発しました。レーザーコーティング加工は、基板上にコーティング粉末を噴射すると同時にレーザー光を照射し、高品質なコーティング膜を付与する技術です。本加工技術は金属基板に異なる金属膜を薄くコーティングすることで異なる機械的性質を付与できることが特徴です。しかしながら、要求仕様を満足するコーティング膜を付与するためには、コーティング粉末の供給量やレーザー光の出力などを、基板材料とコーティング粉末材料の組合せに応じて適切化することが求められます。今回開発したSPLICEはこのコーティング膜厚、溶込み深さなどの要求仕様を満足するレーザー照射条件などの施工前評価を実測では数ヶ月要していたのに対して数週間に短縮することができました。SPLICEの根幹を成す固体金属の溶融・凝固過程の評価性能は、SPring-8からの高輝度放射光X線を用いたイメージング法などにより、その妥当性を確認しています。今回の成果により、今後市場展開が計画されているレーザーコーティング装置の産業界での市場拡大が期待されます。
本成果は、内閣府が進める戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)/革新的設計生産技術(管理法人:NEDO)の研究テーマの一つ「高付加価値設計・製造を実現するレーザーコーティング技術の研究開発(研究開発責任者:国立大学法人大阪大学接合科学研究所塚本雅裕教授)」において、平成26年度より進めている研究成果の一部です。
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