宇宙望遠鏡を超えるか。パラナル天文台のVLTがレーザーガイド星を使った超鮮明な海王星の画像を撮影

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海王星は、太陽系の中で一番遠くにある星だ。冥王星が残念な事になってしまったので、これは確定した事実になっている。地球からの距離は、最小で44億km、最大で47億km。名称Neptuneはローマ神話の海神ネプチューン、ギリシャ神話ではポセイドンにあたり、海王星はその名の通り、青く美しい姿をしている。岩石核を持ち分厚い大気が存在すると考えられている海王星の、最も有名な写真は、1989年にボイジャー2号が撮影したこの写真だろう。

ボイジャー2号は海王星(天王星も)を訪れた最初の探査機で、現在のところ後に続く機体があらわれていないこともあり、唯一の探査機でもある。そのボイジャーが宇宙的至近距離で撮影した海王星は本当に青くきれいな星だ。しかし、今こんな風に至近距離で海王星を撮影することはできない。理由は単純なもので、海王星周辺を探索している探査機も宇宙船も居ないからだ。なので、海王星研究は地球からの観察と撮影のみということになる。その距離約45億km。宇宙的距離感で言えば近いかもしれないが、現実的距離感で言えば、超遠距離だ。

地上600kmを周回するハッブル宇宙望遠鏡が撮影した海王星の写真が、地球から写したものとしては良く知られている。ハッブル宇宙望遠鏡は長さ13.1m、重さ11t、反射望遠鏡を内側に搭載した、主鏡直径2.4mの宇宙にある天文台のような望遠鏡だ。気象条件や大気に影響されない高精度な観測が可能だ。ハッブル宇宙望遠鏡は地球周回上とは言え、宇宙空間での観測だ。では、本当に地上から、この宇宙望遠鏡に匹敵する精度の観測や撮影が可能であるとしたらどうだろうか。

ヨーロッパ南天天文台(ESO)は南米チリ、アタカマ砂漠の天文観測施設だ。ヨーロッパ14ヶ国+ブラジルによって運営されている。その天文台の1つ、パラナル天文台に設置されている超大型望遠鏡VLT (Very Large Telescope)がアップグレードされ、より鮮明な画像の撮影が可能になった。このパラナル天文台は口径8.2m望遠鏡×4台で構成されており、すね手を光ファイバーで結合して干渉計としての運用も可能だ。アップグレードに伴い望遠鏡の1つに取り付けられたMUSEと呼ばれる分光器とGALACSIユニットの新しい補償光学モード、レーザートモグラフィーを使って観測された画像を初公開した。

宇宙空間で撮影したハッブル宇宙望遠鏡の写真よりも、寧ろくっきりと写っているように見える。本来地上から宇宙を観測する場合、大気の揺らぎや気象条件により正確な観測結果を得ることは困難だ。天文台の多くが乾燥した高地を選んで設置されるのはその悪影響を出来る限り避ける為に他ならない。それでも出てしまう影響を避ける為に考え出されたのが補償光学だ。補償光学は、「大気の揺らぎ等によって生じる星像の乱れを、波面センサーで捉えて、電子制御回路を経て、可変形鏡を変形させることによって、対象となる天体や物体の像を正確に捉えるための技術である。」(by Wikipedia)

そして、どれくらい補正を受けているのかを知る為に、人工的な星の輝きであるガイド星をレーザーで造り出す方法がある。詳しくはコチラを参照して頂きたい。https://optinews.info/2016/10/03/161003/

VLTは夜空に向かって4本のレーザー光を照射することでガイド星をつくり、揺らぎを計測。それを基に大気から受けた影響を補正し、より鮮明な画像を入手することができるのだ。

パラナル天文台4基のうちの一つイェプン(Yepun)望遠鏡による、レーザーガイドを使用した天の川銀河の中心部の観測。Yepunは月の意。下は補正前と補正後の写真。その差は一目瞭然だ。

至近距離で遠く離れた星を撮影するのは大変だ。というよりも非常に困難だ。技術、労力、時間、経費、どれをとっても並の物ではないだろう。地上に居ながらにして観測/計測、撮影ができればそれに越したことは無く、また、星雲や恒星、惑星の鮮明な画像は、未知の部分がほとんどの宇宙を人類が知る上での重大な手掛かりであることは言うまでもない。昨年には重力波の初検出にも成功し、急速に動き始める可能性を秘めている天文学の世界だが、今後も目が離せないような発見や、鮮やかな遠い宇宙の画像を見せてくれることを期待したいところだ。

因みに、至近距離で海王星を撮影したボイジャー2号は、2017年時点でぼうえんきょう座とくじゃく座の間、地球からは171億km辺りを航行しているとのこと。2012年に太陽系外へ出た初めての探査機となった1号に続き、間もなく恒星間空間に突入する見込みだという。打ち上げから40年を超えた2機の探査機が何を見るのか、それを人類が知ることができるのもあと僅かの時間しかないが、そちらもまた、楽しみ且つ興味深いものであることは間違いない。

参考
*GIZMODE
https://www.gizmodo.jp/2018/07/new-super-crisp-image-of-neptune.html
https://assets.media-platform.com/gizmodo/dist/images/2018/07/20/180720neptune2.jpg 図2
https://assets.media-platform.com/gizmodo/dist/images/2018/07/20/180720neptune3.jpg 図4

*Wikipedia
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/0/06/Neptune.jpg/250px-Neptune.jpg 図1
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/b/b8/Laser_Towards_Milky_Ways_Centre.jpg/800px-Laser_Towards_Milky_Ways_Centre.jpg
図3
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/b/b9/Neptune%2C_Earth_size_comparison_2.jpg/800px-Neptune%2C_Earth_size_comparison_2.jpg Top画像

*Astro Arts
https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/9297_voyager

執筆者:株式会社光響  緒方