バックパック型ライダーを背負って京都を歩こう【祇園祭・長刀鉾編】

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祇園祭の山鉾巡行が終わると、京都に本格的な夏がやって来る。これが例年のことなのだが、今年は何かおかしい。7月1日に始まる祇園祭の前から夏真っ盛りの暑さ、宵々宮や宵宮の日にほとんどの年で降る強烈な夕立もなく、猛暑酷暑の毎日が続く京都だが、こういう時こそちょっとばかり頑張って、京都のアレやコレやをお伝えしてみたい。なんといっても、弊社は祇園祭の真っただ中に在るのだから、ここはやはり暑さに負けずに動きたいところ。というわけで、バックパック型ライダーの出番となった。

続け様のお届けとなる『バックパック型ライダーを背負って京都を歩こう【祇園祭・長刀鉾編】』、スタートだ。山鉾巡航は、前祭と後祭の2回行われ、前祭には23基、後祭には10基の山鉾が市中を練り歩くわけだが、もっとも有名な山鉾と言えば、毎年巡行の先頭でお稚児さんが注連縄を切る姿で知られる『長刀鉾』だろう。この長刀鉾、弊社から徒歩1分程の場所に建てられるという、期間限定の超ご近所さんである。祇園祭の全てをスキャンして歩くと、この酷暑の中では超ハードモードの修行のようになってしまうので、今回は長刀鉾メインのスキャンを行うことにした。

祇園祭の鉾立は7月10日~13日。長刀鉾の鉾立は7月10日に始まり、3日程で完成する。


7月10日。土台部分のみ完成。



7月11日には横倒しで作り始めた鉾を起こして、


7月12日には完成する。

総重量約11tにもなる鉾を僅か3日程で釘も使わずに作り上げる技術は素晴らしいものがある。
因みに12日の左側の写真の白地に黒の紋は、八坂神社の紋である「木瓜紋」(五瓜に唐花)だ。非常に珍しいことだが、八坂神社では神紋である「左三つ巴」(上部白地に朱の紋)と、この「木瓜紋」の2つの紋が使われている。由来は良く分かっていないようだが、どちらの紋も祇園祭中は市中あちこちで目にすることができる。

場所は四条烏丸長刀鉾町。先端の鉾頭には名前の通りに長刀が取り付けられている。
平安時代の名刀匠・三条小鍛冶宗近作の大長刀を飾ったことを由来にしているが、江戸時代からは落下の危険もあり竹光に鍍金を施したものを使っているとのこと。宗近の打った「三日月宗近」は天下五剣の一振りに数えられており、日本を代表する刀匠の一人だ。長刀は巡行中に八坂神社や御所に刃を向けることがないように、必ず南向きに取り付けられている。

また、山鉾の真木には下からでは良く分からないが、天王人形(天王さん)と呼ばれる小さな人形が収められており、長刀鉾は源氏の武将・和泉小次郎親衝の天王人形だ。こちらも長刀に由来があり、宗近の奉納した大長刀を譲り受けて愛用していたが、その大長刀に纏わる不可思議な現象が頻発したため、「神仏が宿っているに違いない」と返納した逸話が残されている。

山鉾は絢爛豪華な品々で飾り立てられるわけだが、長刀鉾も勿論例外ではない。堅牢な木組みの上から18世紀ペルシアの華文緞通や、中国明朝の雲龍文綴錦、伊藤若冲下絵の旭日鳳凰図(2016年伊藤若冲生誕300年に合わせて新調)等の華やかな装いで、市中を巡行する姿は正に祭りの目玉だ。

また、此方正面では、山鉾巡航のハイライトとも言われる、稚児による注連縄切が行われる。巡行中は町名が変わるごとに稚児舞が披露される。巡行の際には金銀丹青鳳凰の冠、雲龍金襴赤地錦で唐織霜地の二倍織表袴、鳳凰の丸を浮織した帯状の木綿手繦を左肩から右腰に掛ける、という神の使いの衣装を纏う豪華極まる稚児姿だが、この長刀稚児は本人も周囲も相当に大変なお役目だ。選ばれると、地面を歩いてはならない期間や、食事は男性が作り男性のみと食べる等の決まりがある上、各所への御礼やハイヤーの手配や諸々掛るお金は、全て稚児の一族の持ち出しなのが祇園祭の伝統となっている。その総額、平均約2,000万円。

神事に対して下世話な話で申し訳ないが、所謂「良えとこの坊ちゃん」しか長刀稚児に選ばれないのはこういう事情がある、というのが現実でもあるので、軽々しく稚児をやってみたい、と思わない方が良いかもしれない。

長刀鉾の全長22,826m。毎年大きいと見上げていた長刀鉾だが、こうして数字として測定結果が表示されると、改めてその高さを実感する。

高さがある為、通りの建物や電線に当たるのを避ける為、屋根には「屋根方」と呼ばれる役割の人が上がり、接触しそうになったら、何と、足で蹴って回避させるという荒技を使っているということを頭の片隅に置いておくと、巡行を少し変わった見方で楽しめるかもしれない。

山鉾は期間中には公開して中を見せてくれるものもあるので、興味がおありの方は一見の価値ありだ。但し、この長刀鉾は女人禁制となっているのでその点は悪しからず御了承願いたいところだ。
さて、今回のスキャンの感想としては、「暑い!」「人が多い!」。暑さは歩く距離の短さと会社から極々近所ということで何とかなったが、流石の観光シーズンの人出は容赦がなかった。今回のデータは、人込みを避ける為に早朝にスキャンしたものだ、ということを一応追記しておきたい。

祇園祭シーズンの京都に来られる際には、暑さ対策をされることをお勧めしつつ、今回の『バックパック型ライダーを背負って京都を歩こう【祇園祭・長刀鉾編】』はここまで。また次回をお待ち頂ければ幸いだ。

参考
http://www.city.kyoto.lg.jp/shimogyo/cmsfiles/contents/0000011/11773/p01-02.jpg 図1
http://www.city.kyoto.lg.jp/shimogyo/cmsfiles/contents/0000011/11773/p01-b1.jpg 図2

動画:https://youtu.be/B7l9IcTjTWE

執筆者:株式会社光響  緒方