(フェムト秒パルスレーザー ポンプ-プローブ分光法を利用)銅酸化物におけるスピン系の超高速ダイナミクスを検出

ポイント

  • 高温超伝導体の母物質である銅酸化物において、光励起による電荷キャリアの生成に伴って生じるスピン系の超高速ダイナミクスはこれまで直接観測されていなかった。
  • 時間幅7フェムト秒のパルスレーザーを用いたポンプ-プローブ分光法を適用することによって、磁気ポーラロンの形成過程、および、スピン系のダイナミクスに関係した光励起状態間の量子干渉を実時間観測することに世界で初めて成功した。
  • 今後、情報科学に基づく新しい理論計算を用いて結果を解析することにより、電荷とスピンの相互作用に起因する強相関電子系の物理現象の解明が期待される。

二次元銅酸化物における高温超伝導の機構や複雑な電子状態を理解するには、母物質である二次元モット絶縁体に導入された電荷キャリアの性質を明らかにする必要があります。二次元モット絶縁体中の電荷キャリアは、反強磁性的に配列した周囲のスピン系と強く相互作用すると考えられており、電荷キャリアが磁気ポーラロンを形成することや、モットギャップ遷移に対応する吸収ピークの高エネルギー側に2マグノン励起によるサイドバンドが現れることが理論的に指摘されています。しかし、このような電荷とスピンの相互作用によって生じると予想されるスピン系の動的挙動(ダイナミクス)は、これまで直接観測されていませんでした。

東京大学 大学院新領域創成科学研究科の宮本辰也 助教、岡本 博 教授(兼 産業技術総合研究所 先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ 有機デバイス分光チームラボチーム長)、東北大学 大学院理学研究科の石原純夫 教授らのグループは、京都大学、産業技術総合研究所の研究グループと協力して、時間幅7フェムト秒(fs)(1fs=10-15秒)のレーザーパルスを用いたポンプ-プローブ分光法を典型的な二次元モット絶縁体である銅酸化物Nd2CuO4に適用し、電荷キャリアの生成によって生じるスピン系のダイナミクスを世界で初めて検出しました。結果を解析することにより、電荷キャリアが約18fsで磁気ポーラロンを形成することが明らかとなりました。また、2マグノン励起に関係した光励起状態間の量子干渉を観測することに成功しました。これは、2マグノン励起を伴うサイドバンドが存在する明確な証拠となります。

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