- テラヘルツ時間領域分光法による炭酸塩鉱物の結晶構造を高感度で定量する手法を開発した
- 従来のX線による分析法を超える感度で観測が可能で、低Mg方解石等の含有率を求めることにも成功した
- 過去の海洋環境の記録媒体として重要なサンゴ骨格の変質度等を評価する新しい方法として活用が期待される
2.概要
国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 平朝彦、以下「JAMSTEC」という。)生物地球化学研究分野の坂井三郎技術研究員らは、パデュー大学、浜松ホトニクス株式会社、国立大学法人東京大学及び国立大学法人広島大学と共同で、テラヘルツ(以下「THz」という。)時間領域分光法により、炭酸塩鉱物の結晶構造を高感度に定量できることを明らかにしました。
天然に存在する主要な炭酸塩鉱物である高マグネシウム(Mg)方解石、低Mg方解石、アラゴナイト及びドロマイトは、大理石やサンゴ等の地球や生命の骨格を構成する主要鉱物であり、その識別や定量は、地球惑星科学をはじめ、医薬、産業分野等の観点からも重要です。これまで、これらの炭酸塩鉱物の識別と定量にはX線回折法(以下「XRD」という、(図1a)が用いられてきました。近年、結晶格子の振動に起因する吸収特性を感度よく観測できるTHz波領域(図1a)の吸収分光が可能となり、エックス線と比べて安全なTHz波を用いた結晶学的解析への応用が期待されていましたが、一部の検出例があるのみでした。
そこで本研究では、広帯域THz時間領域分光法(0.5~7THz)(図2a)により、炭酸塩鉱物の吸収特性を全反射測定法(図2b)により計測した結果、高Mg方解石、低Mg方解石、アラゴナイト及びドロマイトに特徴的な吸収スペクトルが取得できることを明らかにしました(図1b)。また、得られた各吸収スペクトルに基づいて、測定サンプルにおけるそれぞれの含有率を求めることに成功し(図1c)、アラゴナイト中の極微量の低Mg方解石(1%以下)の高感度の検出も可能であることを示しました(図1d)。従来法であるXRDを超える感度を実現することにより、例えば過去の水温指標である方解石のMg/Ca比や、過去の海洋環境の記録媒体として重要なサンゴ骨格の変質度を評価するための新しい方法として活用が期待できます。
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