レーザー光で羽毛の痕跡を発見!! 太古の鳥は孵化してすぐに走れていた!

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左)エナンティオルニス類イベロメソルニス復元模型
右)同ロンギプテリクスの化石

恐竜から進化したのが鳥類、或いは獣脚恐竜の亜種が鳥類、というのは最早世間の常識となりつつある昨今、全身の色が判明したり、卵が色付きだったことが分かったり、彼のティラノサウルスは羽毛が生えてモフモフだったのではないかと疑われ巷を騒然とさせたり、と古代生物業界は何かと騒がしく、新たな発見に満ち溢れている。
この活気ある古代生物業界に、また新たな研究の成果が齎された。
白亜紀に生きていた鳥類のヒナは、現代のニワトリのヒヨコの様に羽毛が生えていて孵化してすぐに走れた/飛べた可能性があることが分かったのだ。

現生鳥類の中でタカ、オウム、ハト等の共通点は、生まれたばかりのヒナに羽毛が生えておらず目も開いていないことだ。こういった留巣性のヒナは巣立ちできるようになるまで親鳥の助けを受けながら成長する。鳥類の約2/3はこのタイプだ。
では、まだ恐竜としての形質を多く残していた古代の鳥たちはどうだったのか。今回研究対象とされたのは、「エナンティオルニ類」のヒナだ。「エナンティオルニス」は白亜紀に広く分布していた鳥の一種で、ティラノサウルスやアンキロサウルス、トリケラトプスといったスター級恐竜たちとは同期にあたる。蛇足だが、同じく有名なステゴサウルスは、ジュラ紀から白亜紀前期の恐竜なので、白亜紀末期に隆盛を誇ったティラノサウルスの時代には既にいなかったのではないかと言われている。
エナンティオルニス類の多くは嘴の中に歯が生えていて、翼の中に鉤爪を持っているが、ジュラ紀に存在した始祖鳥等と比較すると現生鳥類に非常に似た構造をもった鳥だ。種によっては1m程の大きさまで成長し、生態的には現代で言うところのハゲワシやワシのようなポジションにいたようだ。
そのヒナである3cm程の小さな化石は、以前に調べられた時には羽毛の痕跡が見つからなかった。つまり、留巣性の鳥だとされてきた。それに疑問を持ったのが、米科学振興財団のマイケル・ピットマン氏だ。スペインのラス・オヤスで発見された他の鳥類には羽毛が残っているものがあったことが、疑問のきっかけだったという。「当時の技術で発見できなかっただけなのではないか」、そう考えたピットマン氏と同僚のトーマス・ケイ氏は、化石の再調査に乗り出したのだ。

以前の紫外線とシンクロトロンビームを用いた分析では、ヒナの化石に羽毛の痕跡を発見することはできなかった。今回使用されたのはレーザー誘起蛍光だ。これは、レーザーを化石表面に照射して原子を刺激し、特定の物質を発行させて肉眼では見ることのできない特徴を明らかにする技術で、世界で初めて全身配色が解明されたアンキオルニス・ハックスレイの調査でも活躍したので、ご存知の方もおられるかもしれない。


図1:A、Cは通常光で撮影した化石。Bはレーザー誘起蛍光で撮影された写真。写真下部に羽毛が確認できる。

結果、ヒナの化石の首周りや翼に綿羽の存在を示す線状の痕跡、更には身体の左側の翼部分にあたる箇所に大きな羽弁がついた羽らしきものまで確認することができた。研究者曰く、ヒナが孵化した時点で主翼が十分に発達していたと考えられる大きさだということだ。つまり、エナンティオルニスのヒナは孵化してすぐに動き回ることが可能な離巣性だったことになる。
この結果はエナンティオルニス類についてこれまでに分かっていることとも整合が取れている。エナンティオルニス類の親鳥は抱卵をしない。ヘビやカメやワニの様に産んだ卵を土や泥に埋めていたことが分かっている。生まれたヒナは当然のことながら親鳥の庇護を受けることができない。目も開かず体温調節の為の羽毛も無い状態では、餌が取れず餓死するか寒さで凍えるか、それ以前に敵の多い白亜紀では一瞬で他の恐竜に食べられてしまうだろう。それでは種の断絶は免れない。エナンティオルニス類のヒナが離巣性/早成性だった、と判断するのは非常に理にかなっているのではないだろうか。

肉眼で見た化石に羽毛が無いからといって、羽毛の無い恐竜だったことにはならない。これまで調べられてきた恐竜の中にも実は羽毛が生えたものがいるのかもしれない。ただの土や石の塊だと思い込んでいた箇所CTスキャンしたら恐竜心臓が写しだされた、なんていう驚異の例もある。技術の進歩に伴って判明する古代生物の姿は今後どんどん増えていくだろう。航空レーザースキャンによって、生物だけでなく生活の痕跡である足跡化石等が大量に発見されていることもあり、新技術によって大きな進歩を遂げていきそうだ。

最後に、このエナンティオルニス類は50種程が確認されているのだが2017年にミャンマー産の琥珀の中に閉じ込められたヒナが発見されている。これまでに確認された中で最も完全な状態の化石として大いに注目を集めていることも付け加えておく。

図2:琥珀に閉じ込められたエナンティオルニス類のヒナ。頭や羽、足や皮膚も完全な状態で残されている。

参考
*NATIONAL GEOGRAPHIC
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/032600182/?P=2
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/b/061300091/
https://cdn-natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/b/061300091/ph_thumb.jpg?__scale=w:500,h:351&_sh=0b90e104b0 (図1)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/8/89/Iberomesornis-model.jpg/220px-Iberomesornis-model.jpg (図2)

*wikipedia
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/8/89/Iberomesornis-model.jpg/800px-Iberomesornis-model.jpg (Top画像左)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/8/8b/Longipteryx_chaoyangensis_2.JPG/800px-Longipteryx_chaoyangensis_2.JPG (Top画像右)

*カラパイア
http://karapaia.com/archives/52255102.html

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執筆者:株式会社光響  緒方