―極端に強い光と物質の相互作用に関する理解が大きく進展―
京都大学大学院理学研究科 永井恒平 (博士課程学生)、田中耕一郎 教授らの研究グループは、東京都立大学大学院理学研究科 宮田耕充 准教授らとの共同研究において、高強度レーザー光を固体に照射すると、光と固体中の電子状態が一体となった状態が形成され、新たな対称性である「動的対称性」が創出されることを実証しました。
レーザー光は物性を調べるための道具として科学の幅広い分野において認識され、物質との相互作用が長年研究されてきましたが、近年は物質の性質を大きく変えてしまうほど強いレーザー光を用いた物性研究が注目を集めています。強いレーザー光は光と物質が一体となった状態を作り出すことが期待されることから、それを用いて新たな機能を創出しようとする物質制御法が模索されています。この制御において重要なキーワードが「対称性」です。その中でも「動的対称性」と呼ばれる新たな概念がレーザー光によって作られた状態を一般的に記述できることが近年理論的に提案されていましたが、固体における実験的検証はほとんどありませんでした。
本研究グループは、赤外域の高強度レーザー光を物質に照射し、その状態における対称性を光散乱過程の系統的な研究により検証しました。光散乱における入射光と散乱光の偏光の関係が動的対称性を用いた理論によって包括的に説明できることから、高強度レーザー光が照射されている固体では、光と電子状態が一体となった動的対称性が実現されている状態が確かに形成されていることを明らかにしました。この成果は、高強度レーザー光による「動的対称性」を用いた量子情報処理や、光散乱過程を用いた光源開発、光通信技術などへの展開が期待されます。本成果は、2020年8月11日に英国の国際学術誌「Communications Physics」にオンライン掲載されます。
この情報へのアクセスはメンバーに限定されています。ログインしてください。メンバー登録は下記リンクをクリックしてください。