(レーザー関連)約10兆分の1秒の世界をスローモーションで 観察できる超高速動画像の撮影時間の倍増に世界で初めて成功

 本学電気電子工学系 粟辻安浩教授,澤島雄祐大学院生らの研究グループは,約10兆分の1秒の世界をスローモーションで観察できる超高速動画像の撮影時間を倍増することに世界で初めて成功しました。3次元画像技術であるディジタルホログラフィーと超短パルスレーザーを応用した超高速イメージング技術を用いて,従来システムでは不可能であった複数枚のディジタルホログラムを1台の撮像素子で記録するための新たな光学システムを開発し,超短光パルスが伝播する様子の,より長時間の動画像記録・観察を達成しました。この研究成果は,2020年11月13日に,米国電気電子学会IEEEが出版する学術雑誌「IEEE Journal of Quantum Electronics」に掲載されました。

ポイント

  • 3次元画像技術であるディジタルホログラフィーと超短パルスレーザーとを融合することで実現する,光伝播をスローモーション動画で記録・観察できる技術において,動画像の撮影時間を倍増する光学システムの構築に世界で初めて成功した。
  • 従来法に比べ,光が伝播する様子のより長時間の動画像の撮影に成功した。
  • これまでは観察できなかった時間領域の様々な現象の観察へ応用でき,超高速現象の解明や理解への貢献が期待される。

研究の背景
 2018年にノーベル物理学賞を受賞した,極めて短い時間だけ光を照射できる超短パルスレーザーは,最先端の自然科学,材料工学,情報通信,医療など幅広い分野での利用が急速に進んでいます。このような最先端のレーザー技術においては,レーザーから発せられた光が伝播する様子の観察・評価技術の確立が求められています。一方,アインシュタインの相対性理論では光はこの世の中で最も速く,真空中を毎秒30万kmの速さで伝播します。そのために光の伝播は速すぎて直接見ることができないだけでなく,世界最高速級の高速度カメラでも観察が極めて困難です。超短パルスレーザーが出射する光パルスの伝播を画像,とりわけ動画像でスローモーション観察できると,高性能光ファイバーによる光通信の大容量高速化,パルスレーザーの性質を利用した加工技術の高精度微細化,レーザナノ手術の超高精度化など様々なレーザー利用技術革新の基盤となります。
 本学 粟辻安浩教授,大学院博士前期課程 澤島雄祐らの研究グループは,光の3次元情報を記録・再生できる技術であるディジタルホログラフィーと超短パルスレーザーを組み合わせて,光パルスの伝播をスローモーション動画で記録・観察できる技術に関する研究を行ってきました。しかしながら,この技術による光が伝播する様子の動画像の撮影時間は,ディジタルホログラムの記録に用いる撮像素子の横の長さにより制限されており,これまでその動画像の撮影時間を延長する方法は未報告でした。

研究の内容
 本研究では,ディジタルホログラフィーを基にした超高速イメージング技術により記録・観察できる,超短光パルスが伝播する様子のスローモーション動画像の撮影時間を倍増できる技術を提案し,その技術に基づく光学ステムを構築しました。従来技術では,1台の撮像素子を用いて,光が伝播する情報を1枚のディジタルホログラムに記録し,動画像として再生することで観察していました。この記録したディジタルホログラムのサイズが光伝播を観察できる動画像の撮影時間に直結するため,その撮影時間は撮像素子の横の長さに制限されていました。
 本研究で提案した技術は,超短光パルスの伝播の様子のスローモーション動画像の撮影時間を倍増させることが可能です。従来法では,1台の撮像素子に1枚のディジタルホログラムを記録していたのに対し,提案法では,撮像素子の面積を効率的に利用するための新たな光学システムを開発し,1台の撮像素子に複数枚のディジタルホログラムの記録が可能になりました。これにより,従来法の制限を克服し,動画像の撮影時間を延長することに成功しました。提案法では,1枚目に記録された光が伝播する続きの情報を2枚目のディジタルホログラムに記録するため,従来法で得られる動画像の続きの動画像を取得でき,光伝播のより長時間の観察ができます。
 本研究では,2枚のディジタルホログラムを記録するために必要な2つの参照光を生成するための光学システムを従来の光学システムに導入します。さらに,撮像素子面の前に,隣り合う画素毎に異なる光の振動方向である偏光を検出する微小偏光子アレイを配置した撮像素子を用いることで,複数枚のディジタルホログラムを記録します(図1)。原理確認実験として,拡散テープを張り付けた定規上を伝播する超短光パルスを観察し,定規の目盛りの変化から,より長時間の超短光パルスの伝播の様子の観察に成功し,スローモーション動画像の撮影時間を倍増できたことを定量的に確認しました(図2)。

今後の展開
 本研究で提案・実証した技術は,これまで不可能であった超短光パルスが伝播する様子のスローモーション動画像の撮影時間を倍増することを実現するため,従来は観察できなかった,より長時間の超短光パルスの伝播の様子の観察や,それに伴うフェムト秒領域の様々な超高速現象の動画像観察を可能にします。例えば,光通信に用いられる高性能光電子素子の開発への貢献が期待されます。さらに,本技術による超高速現象の動画像観察により,例えば,レーザー加工時に繰り広げられる超高速現象のメカニズムの解明の強力なツールとなり,微細加工の超高精度化への貢献が期待できます。

謝辞
 本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS) 科学研究費補助金基盤研究(A)「フェムト秒光パルスの偏光伝播の顕微動画像記録・観察とその超高速現象観察への応用」の支援を受けて行なったものです。

出典:
https://www.kit.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2020/10/news20201113.pdf

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