-次世代重力波望遠鏡での応用に期待-
【要点】
- レーザー光が鏡を押す力を復元力とする光バネを、量子光学で扱う非線形光学効果を応用して硬くすることに世界で初めて成功。
- レーザー光の光量を増やさずに、信号成分を増やして応答を向上させる信号増幅を導入。
- 次世代重力波望遠鏡の高周波感度を向上させる技術への応用などに期待。
【概要】
東京工業大学 科学技術創成研究院の小田部荘達特任助教と理学院 物理学系の宗宮健太郎准教授らの研究チームは、量子光学(用語 1)の技術を応用して光バネを硬くすることに世界で初めて成功した。
光バネは、向かい合わせに配置した鏡の間の空間にレーザー光がため込まれる光共振器(用語 2)において、レーザー光が鏡を押す力を復元力として用いる振動子である。機械振動子のような熱ゆらぎがほとんどないため、微小信号計測のための究極のプローブ(測定器を構成する要素のうち物理量を感知する部分)として注目されている。光バネを硬くすることができれば、鏡の振動の抑制や、高周波の測定が可能になり、プローブとしてのユーティリティもさらに向上する。しかし、従来の光バネの硬さには光量で決まる上限が存在していた。
本研究では、量子光学で扱う技術である非線形光学効果(用語 3)を導入し、光量は変えずに信号成分を増やす方法によって、光バネを硬くすることに世界で初めて成功した。研究チームはこの技術を、時空のさざ波である重力波(用語 4)をとらえる次世代の重力波望遠鏡に応用することを提案している。特に現在の重力波望遠鏡では観測できない、中性子星(用語 5)の連星合体後に放出される重力波をとらえるには、今回開発したような光バネを硬くする技術が有望である。
今回の研究は、東京工業大学 理学院 物理学系の臼倉航大学院生、鈴木海堂大学院生、東京大学 理学系研究科の小森健太郎助教、カリフォルニア工科大学の道村唯太研究員、早稲田大学 理工学術院の原田健一研究院講師らとの共同研究として行われた。本研究成果は、4月4日付(現地時間)のPhysical Review Letters誌に掲載され、その号のエディターズ・サジェスチョンに選ばれた。
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