上の画像をご覧頂きたい。地球をグルリと取り囲んでいる白い点の群れは、
ちょっと飾り立ててあげよう、という遊び心では勿論なく、今現在実際に地球の周りをグルグル回っているスペースデブリだ。半世紀ちょっとの間に、地球の周りをびっしり取り巻いている。
1975年のスプートニク1号以来、打ち上げられた人工衛星の総数7600機超。現在稼働中の人工衛星約4400機。打ち上げに伴って衛星軌道上にばらまかれたデブリは10cm以上が23000個余り、それ以下のサイズを含めると1億を超えると言われている。(諸説あり)
まぁ大丈夫だろう、と放置してきたわけではないだろうが、議論はすれども具体的な解決には至らないまま、現状このまま増え続ければいずれ有人ロケットどころか人工衛星も危なくて飛ばせなくなる、というところまで来ているわけだが、近年、対応策は色々と研究されているようだ。日本では理化学研究所が20年以内を目標に、レーザーによるデブリ撤去のシステムを開発中だが、この度、中国発のスペースデブリ撤去の論文が注目を集めている。
中国・空軍工学大学の研究者によるその論文、「Impacts of orbital elements of space-based laser station on small scale space debris removal」(宇宙に置かれたレーザーステーションの軌道要素が小規模の宇宙ゴミ除去に及ぼす影響)の内容は、宇宙に強力なレーザー照射装置を搭載した宇宙ステーションを建造して、スペースデブリをそのレーザーで吹き飛ばす、という何とも豪快なもの。高出力のパルスレーザーを照射して、焼き尽くせるものは焼き尽くし、そうでないものは安全な軌道へ押し出してしまおう、という構想だ。行われた実験は、10cm以下のスペースデブリを吹き飛ばす、という想定で実施され秒間20回、2分間の照射で、対象を焼き尽くすか軌道外へ押し出すことに成功したという。この結果を受けて、研究者たちはこの構想を実現可能としているわけだが、このシステムを搭載した宇宙ステーション又は人工衛星を設置して、実際に運用する、となると、問題は山積している。
大量のデブリ撤去の為に何基の人工衛星が必要になるのか、運用は何処の国がやるのか等、様々あるが、恐らく最も懸念されているのは、このシステムに軍事転用の可能性がある、というところだろうか。スペースデブリを焼き尽くせる威力のレーザーなら、他国の打ち上げた人工衛星を攻撃し破壊することも十分に可能だ。破壊された衛星がインフラに直結するものであれば混乱は必至だ。軍事衛星であったりしたならば、その後の展開は更に悲惨さを増す可能性も大いにある。仮に実用化されるとしたら、相当綿密な計画と国際協力の下で行う必要があるのは間違いない。
そして、中国に対する苦言もチラホラ。
今年1月11日に中国が打ち上げた「長征3号B」のロケットブースターが四川省西昌市の西700km前後の山村付近に落下。あわや有人の集落で大惨事に、という事件が起こっている。(1996年には実際に集落に落下して死傷者を出している)。また、2011年9月に打ち上げられた人工衛星「天宮1号」は2016年9月に制御不能となり、数カ月以内に地球に落下する見通しだが、制御不能なだけに海に落ちてくれるのか都市圏に落下するのかの予測すら困難なままだ。遡れば、2007年にはミサイルによる人工衛星の撃墜実験を行い、大量のスペースデブリを発生させたりもしている。まずは、自分のところのロケットや衛星のコントロールをしっかりやるところから始めて欲しい、というところか。
とは言え、地球周辺のスペースデブリは待ったなしの所まで来ている、と言ってもいい状況なのは事実だ。どんな方法であれ、早急な対応が求められている。
最後に、地球の衛星軌道の状況を立体的に見てみたい方は、『Stuff in Space』をご覧になって見てはいかがだろうか。地球を周回している人工物、宇宙ステーションも人工衛星もロケットも勿論スペースデブリも3Dマップで表示され、軌道や詳細情報を見ることができる。地上ではいまいち持ちにくい衛星軌道への現実感が、少しは湧いてくるかもしれない。
『Stuff in Space』 → http://stuffin.space/
参考
*engadget
http://japanese.engadget.com/2018/01/17/zap-space-junk/
*Gigazine
https://gigazine.net/news/20180118-china-space-debri-laser/
*BGR
http://bgr.com/2018/01/16/china-wants-to-clean-earths-orbit-by-blasting-space-junk-with-giant-lasers/
http://logmi.jp/wp-content/uploads/2014/06/91.jpg (Top画像)
執筆者: 株式会社光響 緒方