SF映画やアニメの中だけの存在だと思っていたレーザー兵器が、今や現実のものとなりつつあるのをご存知だろうか。
2014年、米軍が実施したレーザー兵器の実験映像が公開されている。輸送揚陸艦ポンスに搭載されたレーザー兵器で洋上の標的を4打ちぬく実験である。
四角の部分に搭載されているのがレーザー兵器なのだが、これを操作する兵士の手元に
まるでゲームのコントローラーのような装置が収まっている。冗談のような光景だが、米軍開発の兵器の威力がお遊びレベルの訳が無い。
ターゲットを補足し、
炎上!
標的に設置されたカメラの映像にも着弾と爆発の瞬間がはっきり記録されている。
なかなかの衝撃映像だが、これは映画のワンシーンではなく現実の実験映像であり、2015年には「米軍はレーザー兵器を実戦配備する転換点にある」と発表しているのだ。
1963年に開発されたファイバーレーザーは光ファイバーを使用する物で、DVDで使用されるよりも弱い光を集めて、それを30%以上増幅させることでレーザーに変換する。2000年頃からIPGフォトニクスが開発を進める溶接用の工業用レーザーは軍事研究者の注目を集め、F22やF35を開発しているロッキードマーティン社がレーザーの使用を開始し、2012年には1.5km先の標的を破壊できるADAMと呼ばれるレーザー兵器を発表している
実用に限りなく近いその威力は十分に注目に値するのだが、更に驚くべきは一発撃つごとに掛かるコストである。その価格、「10ドル」。日本円にして1000円ちょっと。これがどれほど異様な価格なのか、現在使用されているミサイルの価格をいくつかあげてみる。
・短距離空対空ミサイルサイドワインダー 2000万円
・中距離空対空ミサイルアムラーム 4500万円
・対艦ミサイルハープーン 8700万円
有名どころをピックアップしたが、この程度の価格が当然のミサイル業界に対して驚くべきコストパフォーマンスだと言わざるを得ない。また、ボーイング社製のHEL MD(車載式レーザー兵器)の場合、標的を無力化する為に必要とされる燃料が非常に少量で済む為、レーザーを生成するエネルギーを車両のエンジンや発電機から供給出来るというメリットもコストダウンへの大きな力となってっている。
2012年にはドイツのミサイル開発会社MBDAが2km離れた地点の対象物の破壊に成功したと発表しており、世界各国のレーザー兵器の開発は過熱して行くことが予想されている。とは言え、霧の発生した状況等においてはレーザー兵器よりも既存のロケット式兵器の方が効果があることなども鑑みると、即座にレーザー兵器との世代交代とはならず、5~10年程度の時間をかけ少しづつ実戦配備、ということになっていくだろう。
参考・写真
GIGAZINE
「執筆者:株式会社光響 緒方」